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『ズートピア』の俳句鑑賞

こんにちは!
アニメ俳句部部長の広瀬康です。
先日、アニメ俳句部で『ズートピア』の俳句を募集したところ、計89句の俳句が集まりました。

みなさまが詠んでくださった句の中から広瀬が個人的にいいなと思った句をピックアップし、鑑賞文を書きました。

句のあとに作者名を敬称略で記させていただきます。

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ボーイスカウト清く正しく冬銀河   イサク

ニックの子供のころの夢を詠んだ一句。幼いニックの純粋な気持ちが中七の「清く正しく」という言葉に現れています。冬の冷たい銀河からは、叶わなかった夢の綺麗さと現実の厳しさが感じ取れます。ボーイスカウトと冬銀河の取り合わせの距離感もいいと思いました。

ズートピア行きの列車や春まぢか   香田ちり

警察学校を卒業し、晴れて警察官になったジュディが列車に乗ってズートピアに行くシーンですね。下五の「春まぢか」からは新しい生活が始まる希望を感じます。タイトルの「ズートピア」という固有名詞を列車の行き先として記すことで、無理なく俳句に詠みこめているのがすごいです。

子ネズミのアイスを齧る前歯かな   草夕感じ

ニックが作ったアイスを買って帰っていた銀行員のネズミたちを詠んだ句かなと思いました。子ネズミから始まって、最後にアイスをガリガリと齧る「前歯」に焦点を絞ったところが良いですね。アイスのガリガリ感が伝わってきます。

暖かや受付事務の顎の肉   平良嘉列乙

警察署の受付のチーター、クロウハウザーを詠んだ一句。クロウハウザーの「顎の肉」の豊かなやわらかさが季語「暖かや」とぴったりだと思いました。ズートピアの文脈がなくてもいい俳句なのですが、ズートピアを観た読者であれば、この句をより面白く読むことができる、そんな作品になっています。

極寸のシフォンケーキや寒灯   土佐藩俳句百姓豊哲

ミスタービッグの娘の結婚式でふるまわれた小さな小さなシフォンケーキを「極寸の」と表現しました。この「極寸」がまさにあの小ささを映像化していてすごいです。季語「寒灯」もツンドラタウンにぴったりでいいですね。

駐禁を切って切って切って春日   鳥田政宗

ジュディが駐車違反を取り締まるシーンの軽快さを「駐禁を切って切って切って」とリフレインで表現する技術、すごいです。リズムよく兎が跳ねるような感じを出しつつ、最後は季語「春日」の体言止めでまとめているのが巧いです。

冬の波明日の私へ胸を張れ   猫髭かほり

主人公ジュディのことを詠んだ句だと思いました。高さのある冬の波に、ジュディが乗り越えたいと思っている逆境が重なります。中七下五の措辞は自分への励まし。この句を読んだ読者も励まされ、勇気をもらえます。

うららけし鼠の国の闖入者   ノセミコ

この「闖入者」とは、球根を盗んだウィーゼルトンとそれを追いかけるジュディですね。鼠たちが暮らすエリアを「鼠の国」と詩的に表現し、季語「うららか」を下五の「闖入者」が裏切る展開が面白いです。

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謝辞

みなさま、素敵なアニメ俳句をありがとうございました。

今回の『ズートピア』の俳句89句は一覧画像にしてアニメ俳句部のアカウントからツイートする予定です。でき次第、後日、ツイートします。

今後もアニメ俳句部はアニメと俳句をかけあわせたイベントを開いていきます。

リクエストご要望等ございましたら、いつでも気軽にリプライやDMをお送りください。

ではまた。

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