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『葬送のフリーレン』の俳句鑑賞

こんにちは!
アニメ俳句部部長の広瀬康です。
先日、アニメ俳句部で『葬送のフリーレン』の俳句を募集したところ、計94句の俳句が集まりました。

みなさまが詠んでくださった句の中から広瀬が個人的にいいなと思った句をピックアップし、鑑賞文を書きました。

句のあとに作者名を敬称略で記させていただきます。

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君といて五十年後の流星群   イサク

勇者一行がエーラ流星を見た場面を詠んだ一句。ヒンメル視点かなと思いました。フリーレンと流星群を見ながら、五十年後も自分は生きているか、生きているとして、誰と流星群を見ているか、考えている。上五「君といて」の現在と、中七「五十年度」の未来を、下五の季語「流星群」がつなぎます。

寝坊助を引きずって行く初日の出   一久恵

寝坊助のフリーレンを起こし、引っ張って初日の出を観に行ったフェルン。中七「引きずって行く」という動詞からフリーレンの寝坊助っぷりが伝わってきます。下五で季語「初日の出」が登場する語順もとてもいいと思います。

マフラーの包む緋色の耳飾り   三尺玉子

フリーレンの耳飾りを詠んだ一句。季語「マフラー」のやわらかさが「包む」という動詞に表れています。「緋色」と具体的な色を描写し、耳飾りのアップで句を締めるという構成。マフラーと耳飾りの位置関係もばっちりですね。

人間をもっと知りたい朧の夜   水蜜桃

ヒンメルの死をきっかけに「人間をもっと知りたい」と思うようになったフリーレン。その心情を率直に表現し、季語「朧」を取り合わせました。朧にぼんやり霞んだ夜は、人間というもののつかめなさを表しているのかもと感じました。

天国の存在談義秋の蝶   草夕感じ

人は死んだら無に還るか、天国に行くか。勇者一行も天国があるかないか論じ合っていましたね。「天国の存在談義」という無駄のない措辞に、季語「秋の蝶」取り合わせた一句。飛び方にも力のなくなった秋の蝶は死後、どこへ行くか。確かめようはないけれど、きっと天国に行くのだろうと思いを馳せます。

空に現る愛しき君の蒼き花圃   龍田山門

アニメを観た方ならば、「蒼き花圃」が蒼月草のことだとわかる一句。上五「空に現る」であの塔の高さを表現していてその手があったかと思いました。中七「愛しき君の」という感情も、ヒンメルがいない今、切なく響きます。個人的に広瀬は塔の上の蒼月草を詠もうとしてうまくいかなかったので、この句のようにアプローチすればよかったのかと勉強になりました。

花野風人の心を知る旅へ   土佐藩俳句百姓豊哲

「人の心を知る旅へ」と踏み出したフリーレン。秋の草花咲く野を渡る風を肌に感じながら、一歩一歩進んで行く感じが心地よいですね。季語「花野風」が葬送のフリーレンの世界観にとてもよく合っていますし、徒歩の旅を感じさせる句になっていて素敵です。

雪の日のバゲット二つ海の街   土佐藩俳句百姓豊哲

海岸清掃の依頼を受けた町での一場面を詠んだ一句。「雪の日」と「海の街」のかけ算によって空気感がすごく伝わってきます。中七「バゲット二つ」で作中主体(アニメで言うとフェルン)に連れがいることを匂わせている点も良いですね。

すこやかな死を見届けて花野ゆく   猫髭かほり

ヒンメルとハイターの死を見届けたフリーレン。二人ともやるべきことをやり終えての「すこやかな死」だったのだと思います。下五の「花野ゆく」でフリーレンの旅がまだまだ続いていくことが伝わってきます。「花野」から感じる明るさは、故人との思い出の明るさなのかもしれません。

百年を生きるよろこび冬桜   ノセミコ

「百年」という時間は、人間にとっては一生に値しますが、エルフにとっては束の間の時間です。「百年を生きるよろこび」をこれからフリーレンは学んでいくのかもしれません。桜の中でも寿命が長く、百年を超えて生きるものもある「冬桜」との取り合わせもぴったりで良いですね。

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謝辞

みなさま、素敵なアニメ俳句をありがとうございました。

今回の『葬送のフリーレン』の俳句94句は一覧画像にしてアニメ俳句部のアカウントからツイートする予定です。でき次第、後日、ツイートします。

今後もアニメ俳句部はアニメと俳句をかけあわせたイベントを開いていきます。

【アニメ俳句部今後の予定】
12月8日~ 『ズートピア』の俳句募集

リクエストご要望等ございましたら、いつでも気軽にリプライやDMをお送りください。

ではまた。

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