『ハウルの動く城』の俳句鑑賞
こんにちは!
アニメ俳句部部長の広瀬康です。
先日、アニメ俳句部で『ハウルの動く城』の俳句を募集したところ、計53句の俳句が集まりました。
みなさまが詠んでくださった句の中から広瀬が個人的にいいなと思った句をピックアップし、鑑賞文を書きました。
句のあとに作者名を敬称略で記させていただきます。
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春めくや魔法使いの歩く空 イサク
ハウルとソフィーが空中を歩いて追手から優雅に逃げるシーンを描いた一句。空を歩くというありえない現象に説得力をもたせる中七の「魔法使い」。春めくころの空の淡さも綺麗に感じ取れます。
星の子が遊びに来たる春の夜 一久恵
この「星の子」は、子供時代のハウルが飲み込んだカルシファーのことかなと思いました。とても詩的な言葉だと思います。艶なる趣が満ちる「春の夜」に「星の子」とどんなことをするのか、読み手の想像力を目覚めさせるような一句。
遠花火魔法使いの夜の孤独 水蜜桃
遠くで揚がっている花火の音が城の中にも届く。荒地の魔女やサリマンから逃げ、いつ人の姿に戻れなくなるかもしれない恐怖を一人で消化するしかないハウルの孤独。遠花火を見上げる人々のつながりの温かさとハウルの孤独の対比が効いていると思います。
ややこしい家族ばかりの秋日かな 土佐藩俳句百姓豊哲
疑似家族がテーマの一つともいえる今作。この句は、ソフィーやカブといったややこしい呪いをかけられた者たちのことを詠んだ句であり、作品と切り離して読んでもとてもいい句だと思いました。何が普通かわからない今の日本ではさまざまな家族の形があります。「ややこしい家族」を季語「秋日」が下五で受け止め、肯定します。
年の差の72より賀状来る 扉
七十二歳も歳の差がある人から「賀状」が届いたという一句。作中では、サリマンがハウルに召集状を送ったり、荒地の魔女がハウルにラブレターを送ったりしていましたね。年齢の離れた交流もいいものだと思いました。
星の入東風ハウルの動く城かな 鳥田政宗
「星の入東風」(ほしのいりごち)これで一つの季語なのですね。勉強になります。星の昴(すばる)の出入によって天気が変わりやすい陰暦十月に吹く風、星の入東風。そんな風が吹く天気不安定の中を、ハウルの城が生き物のように動いていきます。
衛るため広ぐ翼よ春北斗 猫髭かほり
黒い鳥のような姿になって戦うハウルの翼に焦点をあてた一句。この句は、景の切り取り方がうまいと思いました。上五で「衛るため」というハウルの理由、そして中七で広がる翼の映像。下五の季語「春北斗」からはハウルが戦ってるときの高度を感じます。「翼」に焦点を絞ってから「よ」で切り、「春北斗」という遠景にカットが切り替わる。すごいです。
呪はれた家族も愉し春の丘 ノセミコ
呪われているソフィーやカブ。そういった人たちが一緒にいる家族も愉しいのだと。草木の芽吹く「春の丘」に休んでいるハウルの動く城を想いました。マイナスなことの中にも愉しさはあるということを教えてくれるような一句。
寒日和ベーコンエッグ火の悪魔 問答子
ソフィーとハウルがカルシファーの火を用いて、ベーコンエッグを作っていたシーンを詠んだ一句。晴天の寒い日に悪魔の火で作るベーコンエッグ、とてもおいしそうです。
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謝辞
みなさま、素敵なアニメ俳句をありがとうございました。
今回の『ハウルの動く城』の俳句53句は一覧画像にしてアニメ俳句部のアカウントからツイートする予定です。でき次第、後日、ツイートします。
今後もアニメ俳句部はアニメと俳句をかけあわせたイベントを開いていきます。
リクエストご要望等ございましたら、いつでも気軽にリプライやDMをお送りください。
ではまた。
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