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「短編小説集」

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自作の短編小説集です。キャバクラ からファンダジーまで。作品によって幅があるので、気に入っていただけるものがあると嬉しいです。
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2021年8月の記事一覧

光のない路地裏で

轟音が鼓膜を震わせる。ラブホテルに挟まれた小さな空。そのわずかな隙間に、着陸前の飛行機がゆっくりと過ぎ去っていく。大きな機体から車輪が見える。やがて低い音だけを残して、ビルの陰に消える。空には夕暮れの淡い光がもどる。それは子供のころに見た色と同じだった。地上とは別世界の綺麗さで、そのまましばらく見とれた。 休憩3時間で4000円の看板、クラブの前で開演を待っている人たち、路上に椅子を出して座っている老人、サラリーマンが狭い通りにちらほらと見える、ホテルの前で女の子とバイバイ

【ワンス・アポンアタイム・イン・オニガシマ】 #眠れない夜に

2年前に書いた小説のリライトです。「なんのために書くのか?」という問いがあります。「楽しければいいじゃない」という考えもあったけれど、気がついたら2年が経過していました。僕は進んでいるのか? 違う地点に到達できるのか? 「鬼退治を終えたあとの桃太郎」というテイで、僕は僕の問題を語ろうとしていたのかもしれない。いずれにせよ、僕をひきつける物語には、僕自身が含まれている。1万字あるので、眠れない夜にもどうぞ。 めでたし、めでたし、で終わると思っていた。 桃太郎は苦心惨憺のすえ