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「短編小説集」

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自作の短編小説集です。キャバクラ からファンダジーまで。作品によって幅があるので、気に入っていただけるものがあると嬉しいです。
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2019年9月の記事一覧

短編 「百年の愛の行方」

雷雨の夜に恋が生まれる、かどうかはわからないけれど、身体の関係には発展しやすい。 ああ、またこんな情緒のない書き出しになってしまった、だから神聖なるnoteの雰囲気を汚すなとあれほど注意されたのに懲りない。 男女の話ばっかりしてるからよくAV男優に間違われる。存在がいやらしいとか言われるし、男性ホルモン過多なんでしょうって頭皮見て言われる。頭皮は遺伝だから関係ない。呪うなら僕の父と、父の父と、父の(〜300世代前〜)アマ○ラス様のせい(諸事情により伏字)。 僕の誕生時の

短編 「彼女を迎えに」

見慣れないドレス姿の写真が雑誌に掲載されていて、「顔出ししたんだ」と彼女に質問すると、「そのほうが指名が増えるから」と無職の僕には痛いことを返す。 生活費は僕も出しているから、僕はヒモではない。彼女も「仕事はしなくていい」と言ってくれる。「したい仕事がないのなら、無理して働かなくていいから。家にいて」 昼過ぎに二人で目がさめる。彼女は寝起きが悪いので、僕がお湯を沸かしてミルクティーをいれる。朝食をとらない彼女のために、蜂蜜をたっぷりと。ちゃんと混ぜないと最後に甘い部分が残

ドラ○もん 第1巻 「未来来」

死にそうなときに音楽は効かない。小説も読めないし、映画なんて見る気もおきない。外出もできないし、そもそも布団から起き上がることもできない。昼も夜もまどろんでいて、生きてるのか死んでるのかよくわからない時間が過ぎる。今日が何日で何曜日かなんて興味もない。なんにも興味がない。死ぬことにも興味がない。 だから目の前にドラ○もんが現れたってきみはなんにも感じない。ピクリともしない。「ぼくドラ○もんです」ってお決まりの声色を真似ても、一瞬だけチラッと僕を見るけど、また目をつむる。

短編 「カオサンロード・デニーズ」

東京で今年初めて30度を超えた夜、ハエが飛ぶ薄汚い中華料理屋でカタコトの店員に冷やし中華と餃子を注文した瞬間、18歳でタイに行って童貞を半分だけ喪失した過去を唐突に思い出す。 半分てなに? になると思うので、じゃあこう解説しよう。挿入できても射精しなければ半分。これでどう? 僕はたしかに女性器に挿入した気がしたけれど、すぐにしおれて、最後までできなかった。相手はタイ人の女の子で、たぶん同い年で、キャバ嬢だった。 もしかしたらキャバ嬢ではなくて、日本人のサラリーマン相手