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金木犀とばあちゃんの思い出

金木犀の季節になるとばあちゃんを思い出す。

実家には金木犀が植えられていた。季節になると、金木犀の香りが家中にしていた。私はその香りが好きだったし、その香りがする季節が大好きだった。

うちのばあちゃんは、庭造りが上手い人だった。花をたくさん育てて、小学生時分はよく学校に持たせてくれた。金木犀もそうだ。学校に持って行くと「よか匂いやねー」「綺麗かねー」「碧季ちゃんちは、金木犀のあってよかねー」と言われていい気分になっていた。

私は、ばあちゃん子だった。金木犀を切って渡してくれるばあちゃん。百合をくれるばあちゃん、やさしいばあちゃん。

やさしいばあちゃんが大好きだった。

そのばあちゃんが、入院した。癌だった。最後の夏、私はばあちゃんとほぼ毎日一緒に過ごした。特に何か話したわけじゃない。病院にハリーポッターを持ち込んでずっと読んでいたり、高校野球(この年はハンカチ王子とマー君で盛り上がった年だった)をみたりしながらすごしていた。

この夏のことはよく覚えている。行かないでほしいと言われたMISIAのライブ。結局行って、そのライブは私の一番のライブになっているのは皮肉だろうか。

毎日病院に通うのが面倒になったこと。あんなに好きだったばあちゃんが、やせ衰えていく姿をみるのが辛かったこと、ばあちゃんが亡くなったこと。今でも思い出すと泣いてしまう。

もっとなにかばあちゃんに出来たんじゃないかって、思ってしまう。一緒にはすごしたけれど、それ以上になにかできたんじゃないかと思ってしまう。

金木犀の香りの季節になるとばあちゃんを思い出す。そして、あの夏を思い出すのだ。17歳のあの夏を――

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