#2 はじめ方でつまづきがちな、ブランディング。
ブランディングの専門家なんて、社内にいるわけもないし、育てる時間もないし、たいていは外注になりますよね。で、頼まれた専門家は、まずはブランドのあり方をまとめていく代表的な手法のMVV=Mission、Vision、Valueを考えることなどから、ブランディングを推進することになります。で、この人が自分のやり方にこだわりすぎていて、どのブランドにも自分流を当てはめようとするタイプだと、あぶない。ヒアリングを重視しない人は、まずダメです。
100のブランドがあれば100の個性があって、そこを汲み取らないとフィットするブランド戦略はつくれない。では、その個性は、誰と話せば分かるのか?ブランドのことをいちばん考えているのはきっと経営者ですね。だから、経営者と話すのはとても大事なことです。もしかしたら、経営者と話ができさえすれば、大丈夫な会社もあるでしょう。小規模の企業だったら、そうかもしれない。
でもね。中規模以上、大規模の企業で、特にリ・ブランディングの場合は、それだけでは足りないかもしれないです。日々ブランドを体現して、世の中に広げていく活動を日々しているのは、社員です。だから、社員にも聞かないと。
ここからは「社員からの聞き取り」の例えば話です。全員に話を聞くわけにはいかないので、そこは選抜制にしましょう。例えば各部署からバラバラに、役職もいろいろな20人くらいのメンバーに集合をかけて、ブランディングについて意見交換しながら、専門家がまとめていくのが良いんじゃないですかね。もちろん社内メンバーの資質も重要なので、やがてそのブランドを背負っていくような人材を集めてくださいね。その中にパワハラ体質のまったくない取締役を入れておくのも良いです。みんなが発言しやすい環境づくりは大事です。
それをワークショップ的に、週1回開催で最低でも3ヵ月。自分たちのあり方を、しっかり議論し、検討し、詰めて行きます。その後の対外的な訴求についても検討しようと思うなら(その方が絶対良いんですけどね)、もう3ヵ月増やして考えていくことで、やっとみんなに腹落ちするような内容になるわけです。それでブランディングの準備が出来たかな、くらいのところです。
どうでしょう。とてもメンドクサい、たいへんな作業になります。いくらMVVのことを理解していても、ブランド・ステートメントが書けても、マーケティングに詳しくても、コミュニケーションのスキルがあっても、根本の、その企業に本当に合わせる気持ちで社員と向き合って、じっくり取り組むタイプの人じゃないと、うまくいきません。いくらあとでブランドブックを配ったり、研修をやったりしても、浸透しないでしょう。
ある程度の文才があれば、それらしい理念体系とかブランドブックを書くことは、それほどヒアリングをしなくてもできてしまうものです。そうすると、プロジェクトが短時間で、予算的にも、マンパワー的にも(社員20人を毎週2時間拘束するなんて、タイヘンでしょう)、低く抑えながらカタチになり、良さそうに思えたりもします。実際に、そうやってるところは多いだろうなーと思います。ホームページの企業情報ページを見ると、だいたいその感じは分かっちゃう。理念系のところが独立してポツンとした佇まいで、どことも有機的につながってないやつ。理念的なことをまとめ直すのがブランディングと思っちゃってるのか、専門家がそこまでしかやらなかったか、やらせなかったか。と、ここまで書いてふと気づいたけど、インナーの、理念的なまとめから、さまざまなアウトプットまで一貫してできる専門家は、そうはいないってことかもしれない。でも、いないわけじゃない。はず。
で、とりあえず、あなたが依頼しようとしているブランディングの専門家が良い人かどうかを見抜く方法といえば、やはり、こういったブランディングの進め方について、詳しく聞いて判断するしか無いです。そして、「ウチなら2ヵ月でまとめる自信があります」みたいな専門家とか会社は、信じないほうが良いです。
もしかしたら、「求めよ!」ということかもしれません。昔、セゾングループが田中一光氏と出会って「無印良品」が生まれたように、柳井さんが「ユニクロ」の飛躍的な成長のチカラとなるジョン.C.ジェイ氏を探し当てたように、強い意思を持ってブランディングの専門家を探せば、「与えられる」確率はけっこう上がるかもしれません。
フォーマットにはめることで効率よく考えるのではなく、フォーマットは考える手順のひとつくらいに捉えて、組み立て方にも自分たちのブランドらしさが全開で出るようなブランディングを構築できる専門家と出会ってくださいね。そうじゃないと、今の多くの企業みたいに、ホームページになんとなくMVVは載せてるけど、その成果がどこにも見えないような結果になってしまいますよ。