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#83 猫を探していました

それは大型台風が来る前日のことだった。

東京出張のために預けた猫を二匹、実家に迎えに行った後のことだ。四日ぶりに再会したことを喜びながら(飼い主のみ)、車で自宅駐車場に到着した。僕は二匹を猫用のハーネスに繋いだまま、一つのバッグに入れて胸に抱き、ギターを担いでゴロゴロを引いた。
そしてマンションの階段に差し掛かった時、一人の住人が上階から降りてきた。

「こんにちは。まぁかわいい」

なんでもない挨拶だった。そしてそんななんでもない挨拶に対して反応してしまったのはセゴビアだった。知らない人の声がけにビビったのか、何か考えがあったのかは分からない。持ち前の馬鹿力で入っていたトートバッグから飛び出し、そのままの勢いでハーネスから首を抜いたのだ! そして一目散に階段を駆け下り、一階ロビーの外につながる隙間から出て行ってしまった!

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