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大学院(修士課程)入学で起こるミスマッチについて

佐藤ひろおです。会社を休んで早稲田の大学院生をしています。
三国志の研究を学んでいます。

B-KAZさんの記事を読みました。大人の学びは、これまでの経験や知識がジャマをする。経験や知識を、いちど脇に置いて(アンラーンというらしい)さまざまな分野に挑戦しようという記事。

ぼくが思うに、大人の学びにも2種類あって、
・新時代の知識やスキルに追い付きたい(再ツメコミ教育)
・自分なりに抱いている課題・問題を解決したい(研究)

B-KAZさんの記事は、再ツメコミ教育のように見えました。パッケージされたスキル訓練や職業教育、資格の学校は、再ツメコミ教育に特化しているから、ミスマッチが起きにくい。
他方で、ひとによっては、「大学院に行こう!!」と思うひともいるでしょう。今回は、ぼくも通っている大学院の話をさせて下さい。

大学院(修士課程)は矛盾をはらむ

大学院の修士課程(学部卒のひとが入る学年)では、再ツメコミ教育と研究の両方の側面があります。
この両面性が、分かりにくいし、ミスマッチを生む。

側面1。
修士課程では、卒業要件の単位数が多い。再ツメコミ教育の側面です。やることが増え、広く浅く学ばされる。
興味の所在を探すために、広めに投網(とあみ)する。大人にとって、「to do listがめちゃくちゃ長くなること」に感じられ、ひらたく言って、ツライ。アンラーン(知識や経験を脇におく)を要する。
こいつは受け身でやれるんです。入学後、開講されている授業の一覧を手渡されて、このメニューから選んでご覧という。

コース料理で、デザートと飲み物だけは選べますよ、という感じ。このコース料理は、満腹になるほど多いから、デザートを食べるころには気持ち悪くなっているけど。

側面2。
修士課程では、指導教員のもとについて研究する。
入学する前から研究計画書の提出を命じられる。入学直後から、「あなたは何を研究したい人なの?」と問われ続ける。

先生が出してくれた小舟に同乗し、モリで魚を串刺しにする。
大人の場合、これまでの知識や経験のなかから、「何を解き明かしたいか」を語る必要がある。かなり主体的であることが求められる。アンラーンしている場合じゃなくて、知識と経験の、蓄積と結晶を見せつけるべき。

こだわりシェフの1品料理を、わざわざ飛行機に乗って食べにくる、という感じ。そこでしか食べられない、高級で稀少な料理がある。物好き。

あい矛盾することを同時にするから、大人は混乱する。ストレートで、22歳で入学した「子供」ならば、すんなりと順応するのかも知れない。しかし大人は、(曲がりなりにも)自我があるから、ペースがつかめない。

大学院の教育を「サービス」と位置づけるなら、サービス内容は、だれにも分からないんですよね。大学側も教員側も、よく分かってないように見える。過去の経緯の蓄積により、設計図を書いたひとは不在、責任の所在もあいまいだけど、今のかたちになってますよ、って感じ。

大学院(修士課程)はミスマッチを生む

やりたい研究が具体的な大人にとって、再ツメコミ教育は、かなり回り道に思えるし、心身の負担が大きい。ぼくはこれ。
今さら、to do listを長くして、アンラーンを自分に強いることに疑問を感じる。スケジュールをこなしていくだけの日々は、迷走に思える。

大学院に矛盾はないんだ。それを矛盾に感じるのは、キミが不見識だからだ。相乗効果を生むように設計されている、というご高説は、十分に想定できます。でも、それって理想論か、稀少な成功例だと思う。

反対に、再ツメコミ教育を期待して、「大・大学」としての大学院に入りたいひとにとっても、大学院は居心地が悪い。
これから研究(の仕方)を学ぶために入学するはずなのに、入学する前から研究計画書を作らされ、教育を受ける前から研究の展望を述べさせられるのって、何を求められているのか分からない。

場違い感が深刻なのは、再ツメコミ教育を期待した大人のほうだと思います。なぜなら大学教員は、全員が「研究者」だから。
「研究者」が、「ツメコミ教育」”も” やっている感覚だと思うので、再ツメコミ教育に期待して入ってきた大人のことが、理解できない。

大学教員「あなたの研究テーマは何ですか?」
大人の院生「××を勉強したくて」
大学教員「それは本を読めば分かるよね。で、テーマは?」
大人の院生「(先生は何を求めているんだ??)」
大学教員「………」

大人にあてはまる学びの標準、学びのカリキュラム、標準的な考え方を整備して、大人たちと大学院とで共有してくれ!!
なんて言いません。
マニュアル化して割り切れるものではなく、大人ゆえに課題や希望は千差万別でしょう。それにしても、意味が分からな過ぎて、「当事者の努力」「当事者の涙」によって解決してるの、ちょっとツライっす。

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