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インラインスケート 125mmタイヤの選択

 125mmタイヤはその大きさ故にローリング性能が強いので、実は110mm以下のタイヤよりもウレタンの性能差が大きくないように感じます。それでも、125mmの主戦場であるマラソンやロングライドになってくると小さな差が大きくなって来ます。
 また110mm以下ではあまり違いがなかった素材や構造そのものへの工夫も各社出始めて来ています。
 以下は僕が実際に履いた125mmタイヤのレビューです。

MATTER ONE20FIVE / ONE20FIVE CHR

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 インラインスケート業界でもっともチャレンジングな動きをするのがPOWERSLIDE社です。エキセントリック過ぎて失敗に終わったケースもたくさんありますが、125mmは大成功でした。
 125mm規格が出て他社が参入するまでの数年、選択肢はPOWERSLIDE製品しかありませんでした。そのPOWERSLIDEが最初に出していたのがブルーコアに白ウレタンが眩しいONE20FIVEでした。表記もオシャレ!

 個人的な好みで言うと、たくさんの選択肢が出揃った現在でもレースで使っています。他の選手を見ても未だに半数以上がレースで使っています。

 ウレタンはMATTER のG13(110mm以下)と同じものを使っていて、アスファルトとの相性は抜群です。コアも硬過ぎないので初級スケーターに優しく、トップレーサーにも戦力になる銘品に仕上がっています。大口径スケートの楽しさを存分に味あわせてくれるタイヤです。

 CHRは通常版のコアを肉抜きしたもので、多少の軽量化とフレキシブルさをアップしています。乗り心地や性能は大きく変わりませんが、タイムを追求したい場合はオススメです。

オススメ
 アスファルト             ★★★★★
 トラック               ★★★★☆
 天候不順(曇り時々雨)        ★★☆☆☆
 雨天                 ★★☆☆☆
重さ                   185g前後


BONT RED MAGIC

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 BONT社から出たRED MAGICは異例のアルミ素材コアを採用したことで一気に注目を集めました。製造はMPCですのでウレタンはBLACK MAGIC(110mm以下)と共通と思われます。MATTERのONE20FIVEに次いでレースで使われるタイヤです。
 ウレタン性能は言うまでもなく、またMPC系のウレタンの特徴として「柔らかいFIRMは雨天でも結構使える」というのがあり、降ったり止んだりの天候不順のレースでは大活躍します。

 使用性能に問題はないのですが、難点が2つあります。
 1つ目は重量。
 他のタイヤが180~190gで収まっているのに対し、224gほどの重量があります。他のタイヤが1080gのところ1344gになる計算です。1時間から2時間走り続けるマラソンにおいては、末端に掛かるこの300g弱の差は小さくない影響を及ぼします。個人的には「重い」と感じるので、晴天時のレースには使わなくなっています。

 もう一つはベアリングの嵌めづらさです。
 コアもベアリングも金属なので想像通りギシギシとなります。精度が高いほど嵌めづらく、また外すのも困難になります。運が悪いと本当に外れなくなることがあります。
 解決策としてはNINJA BEARING等から出ている樹脂スリーブを使ったミニベアリングが有効です。樹脂の弾力のおかげで硬い枠に収まり、外すのも問題なくできます。

 それらを踏まえても、重さゆえの転がりの良さ、グリップの良さなど特筆すべきものがあり、筋力のしっかりしたヨーロッパの選手には愛用者が多いです。

オススメ
 アスファルト             ★★★★★
 トラック               ★★☆☆☆
 天候不順(曇り時々雨)        ★★★★★
 雨天                 ★★★★☆
重さ                   224g前後


MATTER G13

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<出典:https://www.janvanderhoorn.com/speed-skates/wheels/matter-g13-disc-core-125mm.html>

 とんがり頭です。
 ONE20FIVEと形状が違うだけのはずですが、感触はかなり違います。接地面が少なくなることで抵抗が減り、より高速に滑ることができるというのがコンセプトです。

 それは良いのですが、問題は乗り方です。
 まっすぐに乗れているかどうかで、このタイヤが好きかどうかが分かれてくると思います。接地面がとんがっているため、脚からタイヤまでが一直線になって真っ直ぐに力が伝わっていないとタイヤを倒した途端にガクッと抜けることになります。これを愛用する人はかなり上手に体重を乗せられている人と言えそうです。

 ちなみに海外のレースでPOWERSLIDEの選手が雨の中でこれを履いて戦っていましたが、このタイヤが雨の中でも走れる、というよりはその選手が上手すぎてどんなタイヤだろうが関係ない、という方が近いと思います。

オススメ
 アスファルト             ★★★★★
 トラック               ★★★☆☆
 天候不順(曇り時々雨)        ★☆☆☆☆
 雨天                 ★☆☆☆☆
重さ                     186g


ROLLERBLADE HYDROGEN PRO

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 ROLLERBLADE社のHPを見ると最新のものはMPCのOEMに切り替わっているようなので、コアの形状・ウレタンは写真と異なります。以下は写真のときのHYDROGEN PROについてですが、現在でも流通はしています。

 総じて言えば「無難な」という印象になります。
 決して性能が劣るということではないですが、すごく印象的という特徴もまた見当たりません。誰にでも扱いやすく、スムースに地面を捉え、ウレタンやコアの感触は優しく、一方でもちろんトップ選手のレースにも耐えることができます。特にマイナスがあるタイヤではないのですが、選択肢の中で特にこれを選ぶ理由も強くは見つけづらいのです。他に比べて重量が軽い(実測174g)のはアドバンテージではあります。

 発表間もない頃ヨーロッパの荒天の中のレースで勝ったニュースが印象深く、雨でも有効なタイヤであるというイメージが先行しましたが、他の荒天に使えるタイヤと比べて特別に有能かというと、そこまでではないように思います。もちろん雨天用のタイヤとは比べるべくもありません。
 この件は、このタイヤが特別であったというよりも、どんなタイヤでも雨天の中で走れるほど選手が有能であった、というのが本質かもしれません。ただし、雨天で全く使えないタイヤもあることを考えれば、決して悪い選択ではないのです。

オススメ
 アスファルト             ★★★★★
 トラック               ★★★★☆
 天候不順(曇り時々雨)        ★★★☆☆
 雨天                 ★★★☆☆
重さ                     174g


MPC STORM SURGE

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 雨用タイヤの定番STORM SURGEをそのまま125mmにしたもので、雨天時は確かに使えます。ただし、110mm以下のタイヤで感じるような安定したグリップまでは期待できないかもしれません。
 ウエット路面ではグリップ力が鍵になりますが、110mm以下のセットに比べて2個少ないことによってグリップ力が減るのが原因かもしれません。
 雨天時の安定性のイメージを数字で表すとこんな感じです。

 110mm 通常のタイヤ(BLACK MAGIC FIRM等)  6/10       
 110mm STORM SURGE             10/10
 125mm 通常のタイヤ(RED MAGIC FIRM等)    5/10
 125mm STORM SURGE               7/10

 レースに使うとすると110mm4輪でのセットアップと迷うところですね。
 とは言え125mmでの雨天での安定性が一番高いのは間違いないので、持っていて損はないのは確かです。


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