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窓桜

外は桜が満開のようだ。
ことしはだいぶ遅めの開花で
今日を逃したら雨が続く。
が、花見に出掛けるでもなく
窓から見える桜を眺めている。

かつては花見と言う名の宴会に
繰り出したり、川下りを楽しんだり、
随分ご陽気に過ごしたものだ。
だが、病を得て年も貰い、ふと
「あと何回桜が見れるのだろう」
というニヒルなつぶやきを
心中で聞くようになった。

「そんな年」というには少し
早いのかもしれない。やはり
躁鬱病という病が心を弱くしている。
春と言うのは精神疾患を持つ人には
鬼門ともいえる季節だ。
不安定な気候、朝晩の寒暖差、環境の変化などがストレスになる。花粉症やアトピーもイライラの原因になるので脳に負荷がかかる気がする。
こんな些細なことの重なりが
生きる気力をゆっくりと削ぐ。
体の持病ではないはずなのに
生きるしんどさを感じる日もある。

桜が咲くと日本人は
半端なく盛り上がる。
厳しい冬を超えた嬉しさに狂い、
花の命の短さすらも美しいと讃える。
その騒動がかえって寂しく、
虚しく感じる日が来るとは
思わなかった。

桜は美しい。
今も昔も変わらずに咲き誇る。
移ろい変わっていくのは
人間のほうだ。
桜の木の下で慣れぬお酒に
頬を染めていた私はもう
どこにもいない。

窓から見る桜も綺麗だ。
少し空を仰ぐ。
それだけで気持ちは上向く。
春風が吹き始めた。


#桜
#花見

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