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中国恒大集団(3333.HK):債務不履行の可能性|中国版リーマンショック|中国の不動産バブル崩壊か?①

負債総額2兆元(約33兆円)

中国最大手の不動産デベロッパー中国恒大集団(Ever Grande)の倒産か?

経営危機に直面する中国恒大集団をめぐって様々な憶測が流れており、2021年9月20日期限の利払いさえもできない見込みであるとの報道もされています。

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実際に経営危機の憶測が流れ始めた去年の秋ごろから、この1年で中国恒大集団の株価は約90%も下落しており、下げが止まりません。

これだけの大企業の倒産するとなると市場に与える影響が大きく、中国版リーマンショックともいわれており、米国や日本市場への影響も心配されています。

そこで今回は「中国版リーマンショック」というブラックスワンに備えるため、中国恒大集団の経営危機について解説していきたいと思います。

1.なぜ経営危機に直面しているのか?

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そもそも中国恒大集団はなぜ経営危機に陥ったのでしょうか・・

まずは中国恒大の業績をみていきましょう。

2020年12月期の売上高は約8.6兆円、営業利益1.1兆円で、営業利益率は減少しているものの、業績は順調に推移しています。

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一方で2021年第2四半期(6月末時点)のバランスシートによれば、現預金が1.5兆円しかなく、すぐに現金化できない棚卸資産(開発途中の不動産含む)が24兆円もある一方で、1年以内に返済予定となる流動負債が26.7兆円ある状況を鑑みるに、負債過多が読み取れます。

ですが、中国の不動産市場は右肩上がりに上昇しており、有利子負債が多かったとしても、不動産デベロッパーは銀行等からお金を借りて、更地の不動産を買い、マンションを建ててそれを売却すれば、有利子負債を返済することができます。なので棚卸資産を売却できると考えると、経営危機とまではいえない水準です。

では何が問題なのでしょうか。

2. 中国の不動産融資制限政策

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その背景には中国において住宅価格が上昇し続けていたことが関係します。

中国政府はこの数年、「不動産バブル」を抑制するためにさまざまな施策を行ってきましたが、思うような効果がなく、不動産価格は上がり続けてきました。

そこで中国政府は不動産価格を抑制することを目的に、昨年(2020年)に不動産融資制限政策「三道紅線」(3本のレッドライン)政策を打ち出しました。

3本のレッドラインとは、「(1)資産負債比率70%超、(2)純負債資本倍率100%超、(3)手元資金の短期債務倍率が100%を割り込む不動産企業」に対しては銀行からの融資を制限するという政策です。

先ほど中国恒大のバランスシートで説明したように、同社は負債過多ではあったものの、「不動産価格が上昇し続けているという前提であれば経営危機といえる水準ではない」と言いましたが、不動産融資制限政策によって、その前提が崩れてしまったのです。

この政策により中国恒大は3つのレッドラインを越えていたため、銀行からの融資が制限されることになり、2020年秋から今年にかけて手持ち不動産を3~5割の値引きで投げ売りをしていました。

しかし売却による資金を使って借入の返済に充当しようとしていましたが、間に合わずに、今に至っています。

3.相次ぐ信用不安

そして中国恒大が上半期の決算を発表したあたりから信用不安が加速します。同社が決算発表で「建設を再開して資産売却を推し進め、融資を更新することに失敗した場合、流動性やデフォルト(債務不履行)のリスクがある」と警告しました。

格付け

そして今週に入り、S&Pが中国恒大集団と複数の子会社の格付けを「CC」に引き下げ、「流動性が枯渇しているようだ」とするなど、MoodysやFitchも同様の格下げをしています。

また9月16日には同社が上海上場債券の取引を1日停止することを申請したほか、再開に当たっては取引メカニズムを変更すると明らかにしたことから、市場関係者は社債の取引停止について、デフォルト(債務不履行)と債務再編の可能性が高まっているとの見方を示しています。

4.ブラックスワンに備えて

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中国恒大の負債総額は約33兆円、リーマンブラザーズの当時の負債総額約66兆円

これをリーマンショックの半分だから影響は限定的ととらえるか、約33兆円が終わりの始まりととらえて、やばいととらえるか、見方は分かれるところです。

さすがにこれだけの規模の負債となると最終的には国が救済してデフォルトを回避する可能性を予測する声もある一方で、リーマンブラザーズの時のように、国が救済せずに、今回の問題が中国の不動産セクター全体に波及し、ひいては金融システム全体への影響が及ぶとの見方を示す人もいます。

最終的にどのように転ぶかは神のみぞ知ることなのですが、中国国内の問題で留まるのか、米国や日本まで飛び火するのかはしばらく同社の動向や中国株式市場を注視する必要がありそうです。

個人的には中国政府は日本の不動産バブル崩壊を研究しているため、、不動産融資制限政策が何をもたらすか(つまりバブル崩壊)を理解した上で、政策を導入している考えられるので、中国恒大を救済することはないと思っています。

一方で約33兆円の負債のうち大半を抱える中国国内の銀行には何らかの救済措置を講じないと中国国内の社会不安が増大するので、何らかの救済措置はとると思います。

但し、先日、中国政府がDidiに対し米国上場直後にアプリの新規ダウンロード停止を命じた結果、株価が暴落したように、残念ながら外国人投資家(社債権者)への救済措置は無視されるでしょう。

5.最後に

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今回は市場で注目度が高いテーマを扱いましたが、このノートでは米国や中国に上場するテック企業を中心に企業動向や決算などを解説していきますのでぜひNoteやTwitterのフォローをお願いしますm(- _ -)m


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