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中国恒大集団(3333.HK):債務不履行の可能性|中国版リーマンショック|中国の不動産バブル崩壊か?②

3連休明けの2021年9月21日(火)「前日NYダウの下落幅一時1,000ドルを迫る」という衝撃のタイトルとともに、前の週まで日本ではほとんど報道されていなかった中国不動産最大手の中国恒大集団の債務危機問題のニュースが駆けめぐり、日経平均は約660円下落しました。

中国版リーマンショック」によって株価が暴落するのでは?といった懸念も先週くらいから出始めていたため、前回中国恒大集団について記事を書きましたが、市場が大きく動いたので、続報記事を書きます。

なお、中国恒大集団の債務危機問題については以下の記事でまとめていますので、こちらも合わせて読んで頂けると理解が深まります。

1.実は既に「デフォルト」してる?

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まずは中国恒大の負債総額:約33兆円の内訳について見ていきましょう。

約33兆円の負債のうち、約半分を占めるのが、建設会社などに対する支払いです。

有利子負債は約10兆円で、そのうち銀行ローンが約8兆円、残りの2兆円がドル建ての社債となっています。

そして今回懸案となっている2021年9月の利払日ですが、以下のようなスケジュールになっています。

2021年9月20日(月):銀行からのローン
2021年9月23日(木):社債利息($83.5mil)
2021年9月29日(水):社債利息($47.5 mil)

このうち、21日(火)時点のBloombergニュースによると、20日期限のローン利払いは実施していないため、既に債務不履行が発生しているものと考えられますが、

契約によっては一定の期間であれば利払遅延が債務不履行にはならず、現時点で中国の銀行が「デフォルト」を宣言していないこともあり、まだ正式な「デフォルト」ではないものと思われます。

ちなみに一般的には「デフォルト」は経営破綻(倒産)のイメージが強く、「倒産の危機」というヘッドラインがついているものもありますが、デフォルト = 倒産ではありません。

「デフォルト」とは債務不履行と訳されるように、あくまでも債務の不履行であり、利払いもしくは元本が払えていない状態を意味します。

従って利払いもしくは元本が期日に払えなくても一定期間に未払いを解消すれば、即時「デフォルト」になるわけではありません。

但し、デフォルト(債務不履行)は、一般的な契約において期限の利益を喪失する事由として定められており、デフォルトが発生すると、銀行や社債権者から、支払期日が到来していない金銭債権についても一括弁済を求められるため、実質倒産としてのイメージが定着しています。
(期限の利益喪失条項は一般的な条項で、住宅ローンにもついています。)

さらに一般的なローンや社債には「クロス・デフォルト」条項がついているため、20日(月)の銀行ローンの利払いが「デフォルト」になると他の社債やローンもこの条項により「デフォルト」状態になります。

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クロス・デフォルトとは、債務者がある一つの債務に対して返済を履行できず、デフォルトとなった場合、その債務者が同じ債権者に負っている他の債務や別の債権者に負っている債務に対してもデフォルトする恐れがあるとみなされ、全ての債権者が期日を前倒しして債務の返済を要求できる仕組みを指します。

つまり2021年9月20日(月)の中国銀行団のローンの利払いがされずに、未払いを解消しないと、社債のクロス・デフォルト条項に該当し、社債も「デフォルト」になってしまいます。
(もっと銀行ローンの契約内容は当事者間の契約であるため、表ざたになることはないため、内々に別途合意している可能性はあります)

2.外国人投資家は無視される(デフォルト)

そしてこの記事を書いている最中に、23日(木)の元建て利払いを実施するという速報が入ってきました。

今回のニュースでは「人民元建ての社債の利払」はするものの、US$建ての社債はまだわかりませんというもの。

ここからは私の憶測ですが、中国恒大(中国本体)は既に中国政府や銀行団と「中国債権者は救うけど、外国人投資家は救わない」に合意しており、香港に上場する親会社が外国人投資家向けに発行した約2兆円の社債はについては不払を起こすものと思われます。

中国企業は持ち株会社が香港に上場し、オフショア(外国人投資家からの外貨建ての資金調達)を実施する一方で、オンショア(中国国内)の銀行から借り入れをする形態がとられていることが多いと思われますが、香港の親会社がデフォルトしたところで、中国本土には被害が及ばないため最悪問題ないと考えていると思います。

これだけ海外ニュースが23日(木)の利払いについて報道しているところを見ると、中国恒大というよりも外国人投資家の権利は守られるのかに注目が集まっているように思えます。(リーマンショックの時は当事者として外国人投資家が無視される事例を多くみてきました)

3.株式市場の動向

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中国恒大の株価は前回の記事でも触れた通り、下落が止まりません。

一方で、「中国恒大に端を発した中国不動産バブル崩壊」懸念により2021年9月20日(月)のダウは約1,000ドル近く下げていましたが、21日(火)の香港市場を見ると、中国大手の不動産会社の株価は大きく反発しています。

VANKE(2202):+4%
Country Garden(2207):+9%
China Resource Land(1109):+5%

また22日(水)は香港市場が休場ではありますが、23日(木)の社債利払のうち人民元建ては支払うニュースが出てくるなど動きが出てきていることから、中国恒大破綻による過度なリスクを意識する局面は脱したものと思われます。

4.本当に中国版リーマンショックは起こるのか?

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そして今回の中国恒大のデフォルト懸念が世界経済にどのような影響を与えるのか?

これは私も含めて皆さんが知りたいところでしょう。

私は、中国恒大のデフォルトは避けられないものの、本件を通して世界的な金融不安にまで発展する可能性は低く、過度に心配する必要はないというのが、今のところの結論です。以下が理由です。

1.金融システムではなく不動産会社の問題であること

リーマンショックのときは、投資銀行がサブプライムローンをパッケージ化した商品が世界中に販売され、その損失は数百兆円と推計されているのに対して、今回は1不動産会社の信用不安であり総負債額は約33兆円であること

2.不動産価格が暴落していないこと

約33兆円の負債は基本的には不動産開発に伴う借入や支払いであるため、不動産を売れば回収は可能であり、中国国内の銀行の債権の損失額が限定的であること

3.中国恒大の破綻はこの1年を通して織り込まれ済みであること

中国恒大の株価が示しているように、中国恒大の信用不安は今に始まった話でありません。昨年の秋から株価は下落しており、十分に破綻を織り込む機会が市場にあったものと考えます。

特にこの1ヵ月においては中国恒大が上半期の決算発表時に返済懸念を示しており、リーマンショックの時のようなサプライズは今のところありません。

4.中国政府は十分日本のバブル崩壊を研究している

私が本件がリーマンショックにならないと思う最大の理由は、中国が十分に日本がバブル崩壊にいたった教訓を研究しているという点です。

日本が高度経済成長後、ドル高に苦しむアメリカからの圧力もあって、プラザ合意によって日本は無理やり「円高」にさせられて、輸出産業中心の日本企業が軒並み低迷する中で、日銀が金利を下げたことで、お金の行き場が不動産に流れた結果、不動産価格が上昇、そして再度金利引き上げと総量規制の導入、そして崩壊する。。。

ここで中国政府の良し悪しや好き嫌いは別として、中国がこれだけの大国を維持するために、アメリカからの圧力にも屈しないのは、日本と同じ轍を踏まないようにしている姿勢があるからだと思います。

5.最後に

最後まで読んでいただいてありがとうございます。この記事を気に入ってくれたら”スキ”ボタンを押して頂ければと嬉しいです^ ^

今回は市場で注目度が高いテーマを扱いましたが、このノートでは米国や中国に上場するテック企業を中心に企業動向や決算などを解説していきますのでぜひNoteやTwitterのフォローをお願いしますm(- _ -)m




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