精神科病院はいりません。廃止せよ。

先日、東京新聞の記事に、日本精神科病院協会の会長、山崎学氏との対談が掲載されていた。
 精神科における身体拘束について詰め寄る記者に対して、山崎氏は終始苦し紛れの言いわけに終止していたのが印象的だった。

近年頻発している精神科病院での暴行虐待事件については、まずこの会長は反省の言葉を一切口にしないことが驚きでしたね。それどころか、
「自分たちがやってる医療は正しい」「あんたらが自宅でみれないから、うちらがそういう患者を預かってんだよ?」
 などという、およそ考えられない態度をとっており、開いた口がふさがらないと思えるほど呆れて、怒りを覚えましたね。

そういえば、わたしも看護学校に通ってたときの精神看護学実習では、ある男性の教員がこんなことを口にしていたのを憶えている。
「この病院はまだいい方だけど、精神科の病院の多くは看護のレベルが低い」と。
 精神科では看護師が患者を殴ったり、暴言を吐いたり、虐待をすることが日常化しているのは、滝山病院(東京・八王子)の事件をみても知られているとおりである。こんなのは氷山の一角で、他にも多くの病院でそういった行為が黙認されているのだろう。

コロナ禍の精神科病院で問題になったのは、コロナ陽性患者を鍵付き個室に隔離して出られないようにした上に、部屋には簡易トイレ一つしか置かれていなかったと。自分でトイレに行けない陽性患者については、おむつをつけっぱなしにして後は放ったらかしにしていたようである。
 これは後になって訴訟になり、裁判になっていたと思う。そもそも精神科というのは人権意識の低さが他の診療科とくらべても際立って悪い、というのはある。
 
そのときに精神科病院協会の会長がテレビの取材に答えていたけど、たしかこんな驚くべき発言を口にしていた。
自分たちは病気の治療だけじゃなくて、社会の安全も守ってるんだよ。だから他の診療科よりも大変なんだよ」と。
 精神科において、「病気の治療」とは何だろうか? あんたらに病気を治せんのか、治せないだろう。やれることといえば、患者を多剤処方で薬漬けにして、余計に病気を悪化させることだけで。ほんの一時的に病状がかるくなれば、医者はそれを“寛解した”などと称している(笑) 

つぎに意味不明すぎる文言が、精神科が「社会の安全を守る」って、どういうこと? 
 まるで、精神疾患を抱えた患者が、無差別殺人など凶悪犯罪を起こしかねないから、自分たちが収容している…そういうふうに言いたいのだろうか?
 もしその通りに精神疾患を抱えた患者が、有意に凶悪犯罪に走りやすい傾向がもしあるのであれば、それを示す科学的根拠や論文を教えてもらいたいものである。
 じつは根拠も何もなく、自分の妄想と思い込だけで精神科の患者を危険視して敵対している、およそ医療者にふさわしくない言語道断な態度といえよう。

また、精神科に限ったはなしではないが、病床数が増えれば増えるほど、それだけ入院期間も長くなり、それだけ医療費が増大する、という事実もある。

人口あたりベッド数が多いほど入院が長くなる_。この相関関係は1960年代に米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のミルトン・ローマー教授が見つけ…病院は供給力(病床数)に応じて需要(入院患者)を創出するからベッド数の制御が重要だという考え方が広がり、米欧は1980年代から病床数の抑制にカジをきった。
 「無駄だらけの社会保障」(日本経済新聞社)

医療費・社会保障費の増大が、国の財政を圧迫している昨今において、病床数を削減することは急務である。そのなかで、最優先で削減すべきなのは当たり前だが、精神科の病床であろう。
 日本は世界一、精神科の病床数・病院数が多いとされている。さらに精神科は一般病床よりも、入院期間がやたら長いことがよくある。これは無駄な医療の典型といえる。
 もうこの国には、くだらない精神科の入院医療のために、無駄な財源を費やしてる余裕などもはやないのである。

それでは、退院した精神疾患を抱えた患者たちを、どのようにサポートすればいいのか? 
 そのためには、夕張市で医師をしていた方の活動が参考になるのではないかと思う。

“高齢化した街に必要なのは、「治す医療」にもまして「生活を支える医療」だと訴え、病床がなくなった代わりに在宅医療や訪問看護、訪問介護を積極的におこない、空いた病床で高齢者施設を作りました。
 どうしたら夕張のみんなが元気になれるかを考えて人員もシフトし、高齢者の生き生きとした人生を支えるサービスを提供できる体制に変えていったのです。
『日本の医療の不都合な真実』(幻冬舎新書)

この医師がいうように、「治す医療」ではなく、「生活を支える医療」へのシフトが求められていると思う。
 とくに、精神疾患は治る性質のものではなく、一生付き合っていかなければならないのだから、なおさらである。老人福祉と同じように精神福祉も考えていく必要があるだろう。
 入院から自宅に戻る前の過渡的な施設として、精神疾患患者を受け入れる障がい者施設の充実、というのも重要になるのではないか。少なくても、精神科病院は要らない。さっさと廃止すべき。

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