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大哲学者カントの誕生秘話

今日のおすすめの一冊は、藤尾秀昭氏の『小さな人生論 4』(致知出版社)です。その中から「人生をひらく心構え」という題でブログを書きました。

本書の中に「大哲学者カントの誕生秘話」という心に響く文章がありました。

ドイツの哲学者カントは、馬の蹄鉄屋の子に生まれた。生まれつきのくる病であった。背中に瘤(こぶ)があり、乳と乳の間は僅か二インチ半、脈拍は絶えず百二十~百三十、喘息(ぜんそく)で、いつも苦しげに喘いでいた。
ある時、町に巡回医師がやってきた。少しでも苦しみを和らげられたら、と父はカントを連れて診せに行った。診てもらってもどうにもならないことは、カント自身も分かっていた。そんなカントの顔を見ながら、医師は言った。その言葉がカントを大哲学者にするきっかけとなったのである。
「気の毒だな、あなたは。しかし、気の毒だと思うのは、体を見ただけのことだよ。考えてごらん。体はなるほど気の毒だ。それは見れば分かる。だがあなたは、心はどうでもないだろう。心までもせむしで息が苦しいなら別だが、あなたの心はどうでもないだろう。 苦しい辛いと言ったところで、この苦しい辛いが治るものじゃない。
あなたが苦しい辛いと言えば、おっかさんだっておとっつぁんだってやはり苦しい、辛いわね。言っても言わなくても、何にもならない。言えば言うほど、みんなが余計苦しくなるだろ。苦しい辛いと言うその口で、 心の丈夫なことを喜びと感謝に考えればいい。体はともかく、丈夫な心のお陰であなたは死なずに生きているじゃないか。死なずに生きている のは丈夫な心のお陰なんだから、それを喜びと感謝に変えていったらどうだね。
そうしてごらん。私の言ったことが分かったろ。それが分からなければ、あなたの不幸だ。 これだけがあなたを診察した私の、あなたに与える診断の言葉だ。分かったかい。薬は要りません。お帰り」
カントは医師に言われた言葉を考えた。「心は患っていない、それを喜びと感謝に変えろ、とあの医師は言ったが、俺はいままで、喜んだことも感謝したことも一遍もない。それを言えというんだから、言ってみよう。そして、心と体とどっちが本当の自分なのかを考えてみよう。それが分かっただけでも、世の中のために少しはいいことになりはしないか」 大哲学者の誕生秘話である(宇野千代著『天風先生座談』より)。

天風師は、「悲しいことやつらいことがあったら、いつにも増して、笑ってごらん」といいます。つまり、先に「笑う」から、笑うような出来事がやってくる、ということです。嘆き悲しめば、嘆き悲しむことがずっと続きます。

同様に、病気などで、「痛い」とか「辛い」と言えば、その痛さや辛さが軽くなるなら大いに言えばいいのですが、決してそうはなりません。先に笑うと笑うようなできごとが起こるのと同じように、先に心を健全にすることが、健全な肉体をつくることになります。

全てのものごとは、心の作用が先行するということです。「心の中で思っていること、考えていることが、すべてを創り出している」と中村天風師は言います。つらいときこそ大声で笑うことが必要だということなんですね。

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