人生は《運》で決まる
今日のおすすめの一冊は、向谷匡史氏の『渋沢栄一「運」を拓く思考法』(青志社)です。その中から「勉強の心を失わず、実践に活かす」という題でブログを書きました。
本書の中から「人生は《運》で決まる」という心に響く一節がありました。
人生は《運》で決まる。 これは疑いようのない事実である。 努力が不要だと言っているのではなく、どんな努力も、それが報われるためには運を必とする。言い換えれば、どんな努力も運に恵まれなければ徒労に終わってしまうということにおいて、「人生は運で決まる」と言うのだ。
渋沢は、日本初の銀行設立を皮切りに約500社の起業に関わった。主だった企業を任意にあげてみても、東京海上火災、日本郵船、王子製紙、サッポロビール、キリンビール、 東洋紡績、日本セメント、東京ガス、帝国ホテル、石川島播磨重工など日本経済を牽引してきた錚々たる企業がずらりと並んでいることから、「日本の資本主義の父」と呼ばれる。
実業家としての才覚が備わっていたことはもちろんとしても、この偉業を成すには多くの実業家や資本家の協力があってこそだった。だから渋沢を評して、渋沢の玄孫の渋澤健氏は「栄一は強運の持ち主だった」と語る。「そのいい運は、いい人とのご縁から生じる。栄一はどのような立場であろうと、人の出会いとご縁を大切にしたのではないか」(『プレジデント』 2015年1月2日号)
「出会い」と「ご縁」がキーワードで、《運》は「運ぶ」と読むように、人が運んで来るものであって、《運》という何かが存在するのではない。「出会い」は「ご縁」によって生じるものであることから、これを合わせて「人間関係」とすれば、 「運は人間関係がもたらす」ということなのである。
ここを勘違いして神仏にいくら祈っても、《運》に恵まれることは決してないということを肝に銘じるべきだ。 では、どうすればいい出会いに恵まれ、これをご縁とし、素晴らしい人間関係を築くことができるのか。
「仕事」を念頭に置き、渋沢の言葉を私なりに読み解けば、次のようになる。 「仕事は、ただ知っただけでは興味はわかない。しかし面白いと思えれば積極的に取り組 むようになる。取り組んでみて心から仕事が楽しいと思えれば、どんな困難に遭遇しても 挫けることなく邁進できる」
不機嫌な顔で仕事をしていれば人は敬遠するが、心から楽しんでいる人の周囲には自然と多くの人が集まってくるというわけだ。どんな仕事も苦労がつきものだが、それを楽しんでみせるという処し方が、「出会い」と「ご縁」が《運》を背負ってやってくるという ことになる。
もう一つ見逃してはならないのは、渋沢は毎朝出勤する前、時間の許す限り、面会を求めて来る人に会ったことだ。多忙で時間は限られているので、その人間が自分にとってプラスになるかどうかで会うか会わないかを決めたくなるものだが、渋沢はそうはしなかった。
毎朝の陳情や面談といえば、時代が下がって田中角栄がよく知られ、角栄も渋沢と同様に多忙な時間を割いて分け隔てなく会っている。こうした処し方に人望は集まり、これが《運》という力となって、人を表舞台に押し出していくのである。
その上で渋沢は、 「人を押しのけて自分の利益を求める人と、人も自分もともに利益が得られるようにする 人と、どちらが優れているか言うまでもない」として、「我利」を戒め「利他」を図ることで、Win-Winの人 間関係を築いていく。まさに《運》は人間関係がもたらすのだ。
《「仕事を楽しむ」の精神が人を引き寄せる》 《「運」は運ぶと読むように、人が運んでくるものであって、 人間関係がもたらすものである》
まさに、「運は人間関係」であると思います。人から好かれる人、魅力ある人、つまり人間関係が上手な人は、次から次へと新しいご縁が結ばれます。人が人を紹介し、またその人が《運》を運んでくるのです。
それは、いつも機嫌がいい人、明るい人、仕事を楽しんでいる人です。
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