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事業の繁栄はたった一人から始まる

今日のおすすめの一冊は、藤尾秀昭氏の『小さな人生論 5』(致知出版社)です。その中から「人生は心一つの置きどころ」という題でブログを書きました。

本書の中に「事業の繁栄はたった一人から始まる」という心に響く一節がありました。

志摩半島にあるそのホテルは、さる著名な経営者がバブルの最中に計画、三百八十億円を投じて平成四年に完成した。 全室から海が見渡せる設計。贅(ぜい)を尽くした内装。足を運んだ人は、誰もが「素晴らしい」と歓声を上げる。 しかしバブル崩壊後、経営不振が続き、十年前にホテルは人手に渡った。新経営陣も経営を軌道に乗せるべく手を尽くしたが、赤字は年々嵩む一方となった。
仙台で小さなエステを経営していた今野華都子(こんのかつこ)さんに白羽の矢が立ったのは、そんな時だった。平成十九年、今野さんは現オーナーに請われてホテルの社長に就任した。今野さんを迎えたのは社員百五十人の冷たい、あるいは反抗的な視線だった。それまで何人も社長がきては辞めている。また同じ繰り返し、という雰囲気だった。
今野さんがまず始めたのは、社員一人ひとりの名を呼び、挨拶することだった。また、全員と面接し、要望や不満を聞いていった。 数か月が過ぎた。今野さんは全社員を一堂に集め、言った。
「みんながここで働いているのは、私のためでも会社のためでもない。大事な人生の時間をこのホテルで生きる、と自分で決めたからだよね。また、このために会社が悪くなったとみんなが思っている不満や要望は、私や経営陣が解決することではなく、実は自分たちが解決しなければならない問題です」
そして、今野さんは二つの課題を全員に考えさせた。 「自分は人間としてどう生きたいのか」 「自分がどう働けば素晴らしい会社になるのか」 ホテルが変わり始めたのはそれからである。
自分の担当以外はやらないという態度だった社員が、状況に応じて他部門の仕事を積極的に手伝うようになっていった。 就任二年半、ホテルは経営利益が出るようになった。全社員の意識の改革が瀕死のホテルをよみがえらせたのである。
今野さんが折に触れ社員に伝えた。「自分を育てる三つのプロセス」というのがある。 一、笑顔 二、ハイと肯定的な返事ができること 三、人の話を肯(うなず)きながら聞くこと
仕事を受け入れるからこそ自分の能力が出てくるのだから、仕事を頼まれたらハイと受け入れてやってみよう。 「できません」「やれません」と言ったら、そこですべての可能性の扉が閉まる。
そして、教えてくれる人の話を肯きながら聞くのが、自分を育てていく何よりの道なのである。 今野さんはそう言う。 この三つはそのまま、人生を発展繁栄させるプロセスである。
すべての繁栄は人から始まる。ひとりの人間が自らの人生を発展繁栄させていくことが、そのまま組織の発展繁栄に繋がる。しかも、その発展繁栄の法則は極めてシンプルである。 今野さんの事例はそのことを私たちに教えてくれる。
弘法大師空海の言葉がある。 「物の興廃(こうはい)は必ず人に由(よ)る 人の昇沈(しょうちん)は定めて道にあり」

会社の業績の良し悪しは、すべて社長によるものです。店舗だったら、店長一人で店の業績は決まります。その組織のトップで決まるということです。なぜなら、そこに、どんなに優秀な部下がいたとしても、その上のトップがその人を認めなかったら、その人は一歩も動けないからです。

規模の大小に関わらず、すべての事業の繁栄はたった一人から始まります。

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