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スティーブ・ジョブズの “Dots”

今日のおすすめの一冊は、黒田悠介氏の『ライフピボット』(インプレス)です。ブログも同名の「ライフピボット」と題して書きました。

本書の中に「スティーブ・ジョブズの “Dots”」という興味深い話がありました。

キャリアチェンジのための準備というと、職務経歴書の見直しや資格取得のことだけを想像する人もいるかもしれません。しかしそれだけで転換が可能になるわけではありません。ここで一つ重要な考え方を導入しておきます。それは、過去の経験が偶然につながって未来の可能性が拓かれることがある、ということです。これはキャリアにも当てはまります。仕事を通じた経験が、キャリアの転換を実現するのです。
そのようなことを、アップル創業者のスティーブ・ジョブズは「Connect The Dots」という言葉で表現しました。2005年6月12日に行われたスタンフォード大学の卒業式でのスピーチでのことです。しかし、この言葉は勘違いされることもあるので、誤解のないように伝えておきます。
彼は決して「将来につながりそうなことを事前にあれこれやっておこう」と言っているのではありません。役に立つかもしれないから資格でも取っておこう、ということではないのです。むしろ真逆。ジョブズはそのスピーチのなかで「将来を見据えて点(経験)をつなぐことはできません。後で振り返ってつなぐことができるだけです」と言っています。
つまり前もってどんな経験が役に立つ(点がつながる)かはわからないのです。それよりも、何かにつながると信じていまの仕事に真剣に取り組もうという、そんなメッセージが「Connect The Dots」です。ジョブズ自身も過去に様々な経験をしていて、そこから様々なことを得たと言います。
そういった経験の蓄積(Dots)があったからこそ、結果的に「Connect The Dots」が起きて、iPhoneを生み出すことができたのでしょう。以下にそのスピーチの一部を抜粋して載せておきます。
you can't connect the dots looking forward; you can only connect them looking backwards.
将来を見据えて点(経験)をつなぐことはできません。あとで振り返ってつなぐことができるだけです。
So you have to trust that the dots will somehow connect in your future.
だから、わたしたちは点が将来何らかのかたちでつながることを信じなくてはなりません。
You have to trust in something — your gut, destiny, life, karma, whatever.
自分の直感、運命、人生、カルマ、それが何にせよ、信じなくてはならないのです。
Because believing the dots will connect down the road, it gives you confidence to follow your heart; even it leads you off the well-worn path. And that will make all the difference.
なぜなら、点がつながり道を切り拓くと信じることが、自分の心に従う自信を与えてくれるからです。たとえそれが多くの人が通る道から外れるとしても。そしてそれがすべての違いをもたらすのです。
みなさんが現在の仕事に真剣に取り組む経験もまた「Dots」です。ただし、漫然と仕事をするのではなくて、自分の経験を分析し、ライフピボットに必要な資産を自覚的に蓄積していくことがキャリアの転換には必要です。そうやってみなさんのなかに蓄積された、たくさんの「Dots」が「Connect The Dots」を起こして新しいキャリアの可能性を拓いてくれるのです。

これは、自ら意図して経験を積むというより、人から頼まれたり、会社から命令されたりして、今まで自分が思ってもみないようなことをやるはめになったときこそが、この「 Dots」がたまるときです。自分でも思ってもいない、というところがミソです。なぜなら、自分が意図しないところにこそ運が転がっているからです。自分の計画だったら絶対に手を出さないようなことです。

しかし、そこで大事なことはそれを嫌々やったらダメだということ。どんなつまらなそうなことでも、そこに愉しみや面白さを見つけることです。するとそれが、自分のものになってきます。それがジョブズのいう「Dots」です。

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