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「ピーターの原理」を回避するには

今日のおすすめの一冊は、池谷裕二氏の『脳は意外とタフである』(扶桑社新書)です。その中から「ヒトの脳は都市に住むことに慣れていない」という題でブログを書きました。

本書の中に『「ピーターの原理」を回避するには』という興味深い文章がありました。

ピーターの原理をご存じでしょうか。「会社の上層部は無能な人材で埋まる」とする、カナダの心理学者ローレンス・ピーターらが1969年に発表した説です。翌70年にはブリティッシュコロンビア大学のジュリアス・ケーン博士がコンピューター・シミュレーシ ョンを用いて、この仮説が数学的に正しいことを証明しています。 

優秀な人が抜擢されて出世することを考えると不思議な気がしますが、理由は単純です。 誰でも才能が認められれば昇進できるという自由競争が問題なのです。各人の能力には限界があります。次々に昇進していき、その限界が露わになった時点で出世が止まるわけです。

結局すべての社員は自分の無能さが露呈する地位に停留することになります。 これが、ピーターの原理の真髄です。 学校のクラスのように各メンバーが平等な場合、問題になりませんが、会社のように階層構造がある場合には、ピーターの原理は避けることができません。 

体力のある大企業ならば、他部署の同等ポストに異動させて、能力不足が最小になる配置を模索することができますが、中小企業ではそうした試行錯誤する余裕はありません。とりわけ無能な社員が上層部で人事権を握ると、その悪影響は絶大です。ピーターの原理の悪魔に喰われて自滅してしまう企業もあるでしょう。

最近、カターニア大学のプルチーノ博士らは緻密な数学シミュレーションを用いて、ピーターの原理を避けつつ組織全体の生産性を高めるには、次の二つの方法があることを証明しました。1.ランダムに昇進させる、2.最高の才能を持った人と最低の才能を持った人 を同時に昇進させる

これらの戦略は直感に反しますが、「優れた者を上位に抜擢する」というシステムを採用しているからこそ避けられない現実がピーターの原理なのですから、現実は案外とそんなものかもしれません。

ピーター氏は、できる人だけど、あえて、できない部分を故意に持ち続けることを推奨している。これが「創造的無能」だ。仕事のメイン(自分の能力の発揮できる仕事やポジション)からは離れることなくできる人として遂行し、「玉にきず」という点を持っておくとよいといっている。(nomad journal)より

それは、自分の中に「異」の部分を持てということでもある。それを意識的にやるのが「越境学習」。自分の得意分野や、自分の今の仕事と異なる領域に出掛けていくこと。コンフォートゾーンを抜け出すことでもある。

たとえば稽古事など、新しいことを習えば、仕事ではどんなに優秀であっても、そこでは初心者だ。あえてできない部分を持つことでもある。

自分の専門領域以外に、どれだけ多くの関わりをもっているかも大事だ。それを積み重ねることによって、スティーブジョブズのいう「点と点がつながる」ことになる。

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