人間学と時務学
今日のおすすめの一冊は、伊與田覺氏の『己を修め人を治める道』(致知出版社)です。その中から『「成人」とは「人と成る」こと』という題でブログを書きました。
本書の中に「人間学と時務学」という心に響く文章がありました。
人となるためには、どうしても本になる学問をする、あるいは教育を受けることが大事です。そこで、そのような学問を特に「人間学」と呼んでいます。
これに対して、知識や技術を身につける学問を「時務学(じむがく)」といいます。普通、「じむ」というと「事務」と書くことが多いのですが、これは「時」を書いて「時務」。 成人学の中には、この人間学と時務学との二面があります。
本末という点からすると、人間学が本で、時務学は末になります。 ただし、時務学は末ではあるといっても、知識・技術というものはまさに日進月歩であり、世に立っていくためには常に新しい知識・技術を身につけることが大切です。あるいは企業を運営する上においても、常に新しいものを吸収していかなけ ればなりません。そのときの務めを果たす上において、時務学は重要なものであります。
昔は学問といったら人間学のことをいいました。そして知識・技術を学ぶ時務学のほうは芸といったんです。芸術の芸ですね。 学芸という言葉があります。戦後、日本に学芸大学というのができたとき、これはいい名前だと思いました。
というのは、人の指導をする場合には、人間学であるところの学を修めて、そして世の中に立っていくのに必要な知識・技術である芸を身に修めなくてはいけないからです。 学と芸の両者を修めることによって、人の指導者にもなることができるというわけですね。
ところが、いつの間にやら学芸大学がなくなって、教育大学とか教育学部という ように、人間を指導することを教育という狭い意味にとるようになってしまった。 これはともすると誤解を生みます。本当は、学芸が非常に大切なのです。
時務学は昨今でいうなら、パソコンやITの習得です。今や、パソコンのない会社はないし、個人としてもパソコンやスマホを使いこなせなければコミュニケーションさえとれません。
人間学を学び、身につけることは、よりよき人生を送るための必須のことですが、同時に、時流に合った最新の学芸を学ぶ必要があります。
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