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大宮デン助さんの話

今日のおすすめの一冊は、萩本欽一氏の『萩本欽一 マヌケのすすめ』(ダイヤモンド社)です。ブログも同名の「マヌケのすすめ」という題で書きました。

本書の中に「大宮デン助さんの話」という心に響く一節がありました。

中学を卒業するちょっと前、高校に行かないでコメ ディアンになろうと決心していたぼくは、父親が住んでたアパートの大家さんのツテで、当時浅草で人気抜群だった大宮デン助さんに弟子入りを頼みに行ったんです。そのときに連れて行ってくれたのが、大家さんの知り合いで、演出家の緑川史郎さん。
ところが、デン助さんに「これからの時代はコメディアンも高校ぐらい出ておいたほうがいい。高校を卒業したらまたおいで。そしたら入れてあげる」って言われちゃった。「はい、 わかりました」って帰ってきて、しょうがないから高校に進学したの。
高校を卒業した3年後に、また緑川先生にデン助さんのところに連れてってもらった。先生は楽屋の前で「今、順番待ちだから、ちょっと待ってろ。デン助さんも忙しそうだし、もし『君、誰だっけ?』って言われたら、すぐ帰るからね」なんて言うんだよね。
なんかぼくごときのために、偉い演出家の先生が困った感じになってるのを見て、だんだん申し訳なくなってきちゃって。思わず「先生の弟子にしてくれませんか」って言っちゃっ た。マヌケの特徴のひとつだけど、損するとか得するとかじゃなくて、その場の気まずさを 何とかしたい、その場を気持ちよくしたいって思っちゃうんだよね。
ぼくがそう言ったら、先生は「俺? 俺はすぐだけど、せっかくこれだけ待ったんだから、 もうちょっと待って入りたいところに入ればいいじゃない」って説得してくれた。でも「い や、先生の弟子になりたいです」「ほんとにいいの? じゃあ、来い来い」ってことになって、 すぐに支配人を呼んで「こいつ、これから面倒見てくれ」で話は決まり。
ぼくが有名になってからデン助さんに会うことがあって、聞いてみたんです。「高校出たらまた来いって言われて、ぼく、本当に感謝してるんです。じつは3年後にまた 楽屋の前まで伺ったんですけど、入れてくださいって言ったら入れてくれてましたか?」
「いや、入れてたよ。覚えてたから。でも欽ちゃん、入らなくてよかったね。ウチに来てた ら、今の欽ちゃんはないよ。劇団が元気で上がつまってるから、ラーメン屋さんで『お待ちどおさま』って言う役を10年も20年もやらなきゃいけない。いいとこに行ったよ」
マヌケの欠点が生きたっていうか、マヌケに救われたっていうか。結果オーライなんだけ ど、マヌケだから運が味方してくれたっていうのはきっとあると思う。

学生時代勉強ができなくて、一流大学や一流の会社に入れなかったことが、今の成功に結びついている、という人は多くいます。学業の成績良し悪しは、必ずしも一般社会での成功と結びつかないということです。

起業家や個人事業主やタレントなどの人達にとっては特に、欽ちゃんのいう「マヌケ」であることが大事なのかもしれません。それは個人の魅力に成否が左右されるからです。

それはたとえば、「目先の損得で動かない」「理屈や理論ではなく感性で動く」「あまりよそ見をしないで、続けるのが得意」「思い込みやこだわりがない」「目的思考ではない」「人を刺すような鋭(するど)さではなく、鈍であること」等々。

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