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相手の身になること

今日のおすすめの一冊は、鎌田實氏の『相手の身になる練習』(小学館Youth Books)です。その中から「千人の高校生が立ち上がった」という題でブログを書きました。

本書の中に「相手の身になること」という素敵な文章があったのでシェアします。

幼稚園や小学校で、友だちと仲よくあそんだりするとき、「相手の身になりましょう」と言われたりします。 けれど、そのことの大切さをよく考えたり、毎日の生活のなかで実践できているかどうかというと、疑問が残ります。 現代の社会は、意識して相手の身になろうとしなければ、相手の身にならなくても済んでしまう仕組みになっているからです。
一つは、競争社会という仕組みです。 結果を出すことを問われる成果主義の現代社会では、まず自分が勉強して資格を取得したり、いい大学に入ったり、一生懸命働いてある成果を出すことが求められます。 こうした社会を生き抜くには、相手のことなんて考えないほうがいいと言う人もいます。 相手のことなんて心配していたら、競争に勝てないばかりか、自分が損してしまうという思い込みも広がっています。
もう一つは、言葉に偏ったコミュニケーション社会という仕組みです。 今の若い人たちは、僕が若いころと比べると話が上手で、話題が豊富、発信力のある人が多いように感じます。 すばやく反応して、文章を短くおもしろくまとめたりする力は、SNSで鍛えられているのでしょう。
気のきいた話で、周囲をクスッと笑わせることができる人は人気者。 子どもたちの世界の“スクールカースト”でも上位に君臨できているのは、そういう人かもしれません。 けれど、こうしたウケることを重視したコミュニケーションの陰で、自分の言葉をもつということと、相手の身になるという力は忘れがちになっているように思います。
そもそもコミュニケーションとは、言葉だけではありません。 言葉はコミュニケーション全体のたったの7%といわれています。 残りの93%は、声の調子、顔の表情、視線、しぐさ、態度といった言葉以外のもの。 僕たちは言葉そのものより、言葉以外のものからずっと多くを受け取って、コミュニケーションをとっているのです。 どんなにいいことを言っていても、その人が踏ん反り返って横柄な態度でいたら、何か信用できないと感じてしまうのは、そのためなんです。
SNSでのコミュニケーションのほとんどは、言葉に偏っています。 どういう気持ちが込められているのか、細かなニュアンスを文字から読み取るのは、けっこう難しいもの。 人によってはまったく逆の受け取り方をしてしまうこともあるでしょう。 相手の姿が見えないところで相手の身になるというのは、もともとも難しいことなのです。
さらにコロナ時代になって、オンラインでのコミュニケーションが一気に進みました。 画面越しに顔を見て会話ができたとしても、やはり直接会って話をするのとは違って、相槌がぶつかったり、間合いが取れなかったり、何となく話がかみ合わないような感じがします。
コミュニケーションは、キャッチボールです。 ボールを投げて取る、取っては投げる、この繰り返しで相手のことが少しずつわかってきたり、相手と自分の関係性が出来上がっていきます。 それには相手がキャッチできるようにボールを投げなければなりません。 つまり、相手の身になって、相手に伝わるように話すことが必要になります。
誤解のないように言いますが、僕はSNSが悪いと言っているわけではありません。 SNSという難しいコミュニケーションツールを使いこなすには、もっと相手の身になる力を身につけなければ、SNSという道具に振り回されてしまうと言いたいのです。

「人生でこれさえ守れば間違いのないもの、それは何ですか?」 と問われたとき、孔子は「それは恕(じょ)かな」と答えています。 恕とは、思いやりのことであり、他人の立場に立つことができること、つまり「相手の身になって考えることができること」です。

また、孔子はそのあと続けて「己の欲せざるところ、人に施(ほどこ)す勿(な)かれ」と言いました。 自分がして欲しくないことは、人にもしてはいけない、と。 自分がされて嫌なことは、誰にとっても嫌なことだからです。

これは、偉大なリーダたちが共通して持っている資質「エンパシー」のことでもあります。 エンパシーとは、人の気持ちを思いやることであり、相手の立場に立つことができる想像力や共感力のことです。

この、人の立場に立つことができないと、人に嫌なことばかりしてしまうことになります。 結果、まわりの人から好かれないし、味方がひとりもできないということになります。 つねに、相手の立場に立って、想像力をめぐらし… 相手の身になる練習をする人でありたいものです。

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