時代の新しい空気を感じて生きる
今日のおすすめの一冊は、吉本興業会長、大崎洋氏の『吉本興業の約束』(文春新書)です。その中から「お前、アホやから吉本行かすぞ」という題でブログを書きました。
ブログの詳細はこちら→人の心に灯をともす
ブログでは書ききれなかった、大崎氏の素敵な言葉の数々を抜粋してみます。
社長になって自分に対して決めたことは、部下に対してジェラシーを抱かないようにしようと。昔の僕の上司やった人が、ジェラシーのキツい人やったからね。一緒に放送局に行って、プロデューサーとかから、「大崎さんにお世話になりまして」と挨拶されると、笑いながらちょっとイヤな顔をしはったり(笑)。
そういうのイヤやったから、自分が社長になって約800人の社員の先頭に立った時に、部下が自分より功績あげたり、他の人に大事にされたりしても、1%もジェラシーを抱かん人になりたいって思ったんよね。
岡本っちゃん(現社長)をはじめ吉本の社員にも、みんなとっとと僕を乗り越えていってほしいというか、僕が理解できないところに行ってほしいなと昔から思ってた。だから、部下に対して嫉妬を抱かないということは、社長になってから強く誓ったし、実際に自分ではできてる、良かったなぁと思ってるんやけど。
コロナ自粛期間中は、2つ上の姉と「そういえば、うちのおばあちゃんが『食べたいものは宵(よい)に食え、言いたいことは明日言え』って言うてたなぁ」って、話すような時間もあったしね。気になったことも、すぐ言ってしまうのはやめにして、黙って任せようと、あらためて思うようになった。仕事と離れる時間を持てたことで、会社と自分との距離や、自分の人生も整理できたというか、我に返ったというか。スコーンとつきものがおちたような気がするわ。
この数ヶ月でリモートワークやネット配信も増えて、デジタル化という意味でも、コロナの影響で大きく変わったよね。ラジオに初めて落語家さんが出演した時に、タダの電波で聞かれたら、劇場にお金払ってきてもらわれへんということで、吉本はバリケード作って、「ラジオなんかに出るな」って妨害したらしい。ところが、放送翌日「昨日ラジオを聴いた」ってお客さんが劇場に押し寄せたとたんに、「良かったなぁ」と態度が変わった。会社って、アホやな(笑)ひとりの芸人さんの勘どころのほうが、ちゃんと時代を読んでるんよ。
変化というのは、一直線に上がるとか、階段を一段一段上がっていくというイメージじゃなくて、竜巻のようにすべてのものを巻き込んでうねりながら上がっていくっていくいうイメージがあるんよ。僕は、30年以上前から中国によう行ってたんやけど、その頃の中国って、電話なんて地域に1台しかなくて。しばらくしたら、もう個人が携帯電話を持ってるわけよ。各家庭に1台の固定電話とか、僕らが経験してきた順番をすっ飛ばして、進歩していってる。
そんな中国の変化のスピードを見て、いろんなことがもっとスピードアップして、経過なんかすっとばして、竜巻のように進歩していると実感した。これまでの段階的に進歩していくものさしとは違う時代が来ると、その時から思ってたなぁ。
僕は実際にクリエイトしていくことに、あんまり興味がないんよ。「絵コンテ、なんやそれ?さっさと作って」となってしまう。過程やクリエイトに、あんまり興味ないんです。「こんなことしたい」「あんなことしたい」って思いついたら、「岡本っちゃんに、早よ言おう、言うたらなんとかしてくれるやろ」って、そんな感じ。
これから芸能プロダクションがいらんようになるというのは、そのとおりやと思うし、もんな好きにやったらええんやけど。じゃあ、その時にどうしたらええかっていうのは、トークショーで中多くんが説明してくれたように、エージェンシーはパッケージングビジネスに移行していき、自らタレントの仕事を作ることが大事になってくると思います。
吉本に所属していたら、自分の好きなテレビ番組や映画が作れて、それがSNSと連動できてというような、仕事を作れる会社にならな、あかん。僕が吉本に入った時は、テレビ局から声をかけられて、芸人さんのスケジュールを確認して、仕事が決まったらタレントに伝えて、入り時間に気をつけて、現場では弁当の準備してって、それで1日が終わってた。僕は楽しかったけど、将来的にこんな仕事はなくなるだろうと思ったし、そしたら、新しい仕事を作ることが必要になる。
芸人さんやクリエーターさんと「あなたはクリエイティブに専念してください。あなたに最適な仕事をパッケージで作ります。吉本とエージェント契約しませんか?」という関係に今後なっていけばいいと思う。マネジメント契約なんてゼロにして、エージェント契約を中心にしたってええんや。その逆もまた真なりやけど。
これまでは何かが流行するとか発展する時に、中心に才能のある人や大きな出来事があって、そこから同心円状に広がっていってたのが、インターネットの時代になると、世界のいろんな場所で同じような流行や発展が同時多発的に起きるようになる。それは、デジタル化されたせいだけじゃなくて、人の強い思いや祈りとかって、世界中でなんか不思議なつながりがあるからじゃないかって気がするんよ。
ネットのおかげでそれが顕在化しやすいというだけでね。そうなったらたぶん、エンターテイメントも変わるし、メディアも変わっていく。まぁ、僕はもうおじいちゃんやから、その結果、世界がどうなるかまでには関われへんとは思うけど、時代の空気感は感じていたいし、新しいいまを楽しめるノウハウは持っておきたいなぁと思う。
いくつになっても、「時代の新しい空気を感じて生きる」、「新しい今を楽しめるノウハウを持っている」というのは若くいるコツだと思います。新しいことに好奇心がなくなってしまったとき、人は老いるのではないでしょうか。
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