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まんが日本昔ばなし

「坊やよい子だねんねしな」と祖母に歌ってもらいながら、寝かしつけてもらっていた時期がある。妹が生まれて以来、妹は母にべったりで、母は妹の世話に追われる日々を過ごすようになった。私は近所に住む祖父母に面倒を見てもらうことが多かった。寝る前に、祖父母の寝室でテレビを見ることが多く、特に「まんが日本昔ばなし」が大好きで、釘付けになって見入っていた。エンディングの歌ではアニメのキャラクターの踊りに合わせて、一緒に踊っていたらしい。祖父母から聞いた話だ。私はそれを覚えていないけれど、祖父母が笑顔で、私がテレビを見たりするのを見守ってくれていたことはなぜか覚えている。祖父母と過ごした幼少期は温かく、平穏な時間が流れていた。その番組のナレーションを担当していた市原悦子さんが今年亡くなってしまった。生前、日本昔ばなしについて、「忙しない時間が流れる時代に、皆が居眠りしてしまうような、ゆったりしたテンポを心掛けた。」と語っていた。私はまんまと市原さんの魔法にかけられていたのかもしれない。あるいは祖父母の魔法だったのか。両方かもしれない。あの穏やかで、心地良い土曜の夜の時間の流れが懐かしい。遠い昔の物語。〈2019月1月 執筆〉

「ことばの宝物」という市原悦子さんの本の紹介文を読んで、その時、読んだ瞬間、市原さんのあの声蘇ったんですよね。すごいなって思いました。市原さんの声はたぶん多くの人の記憶に残る声なんだと気付いて。亡くなってしまったから、叶わない夢だけど、いつか市原さんのような人に朗読してもらえる童話を書くことも夢です。

 #エッセイ  #市原悦子   #まんが日本昔ばなし   #ボツ原稿

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