見出し画像

ライトアップと男の子

画像1

秋が深まる時期、宮城県図書館の自然豊かな敷地の一角で期間限定ライトアップが催されていた。七色の光に誘われるように遊歩道を歩く。

「今日ぼくの誕生日だから好きな道歩いていいよね?」とはしゃぐ小さな男の子とおばあさんが現れた。私は心の中で「おめでとう」と呟いた。こんな時、社交的な人間だったら、「おめでとう」って声を掛けてあげられるのに。

ライトアップを間近で見ていたら、さっきの男の子が「こんにちは」と挨拶しながら私の目の前を駆けて行った。私は慌てて男の子が通り過ぎた跡の風に向かって「こんにちは」と挨拶した。おばあさん、おじいさんもやって来た。今度は私から「こんにちは」と声を掛けた。

三人で写真撮影が始まった。「じいじもう忘れたの?」とカメラの使い方を男の子が教えていた。祖父母と孫が睦ぶ姿が微笑ましくて、より一層七色の光が輝いて見えた。でも男の子がどの光よりも一番、周囲を照らす明かりに違いなかった。

画像2


#旅する日本語 #宮城県図書館 #ライトアップ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?