地方、地域の情報をビジネスに。Withコロナ社会がもたらす情報優位の逆転。
TAILOR WORKSという会社の代表をしています、難波です。
最近これからの地方、地域にとても重要になりそうな言葉を耳にしたので、自分なりの考察と未来予測も交えつつ、その言葉と今後の展望について、皆さんとご一緒に考えられたらと思っています。
『開疎化』について考えてみる
初耳だ、という方や、twitterなどで界隈では軽くバズっていた言葉ではあるのでご存じの方もいらっしゃるかも知れませんが、『開疎化』という言葉があります。
ヤフーCSO、慶應義塾大学環境情報学部教授である安宅和人氏が提唱している考え方で、端的にいうと「都市化を突き進んでいた人類の価値観がガラッと変わって、真逆の疎を求めるようになるよ」とういうことです。
上記の図の通りこれまでの都市化は、移動や消費、様々な効率性を求めて「密」を求めていました。例えば、繁華街やショッピングモール、多くのワーカーが働くオフィスなどもこれに当たります。
これに対して開疎化は、密閉と密集を避けた「開けた疎である空間、場所」がこれからのニーズであり、またトレンドになっていく、という考え方です。
「海の家もあって活気があるビーチ」よりも「何もなくてのんびりと、海だけがあるビーチ」
「なんでもある都心の繁華街、住環境」よりも「生活できるぐらいの田舎」
「都市」よりも、「過疎」
このようなコンテンツにニーズが集まるというわけです。
COVID-19という外的要因が起因となり、価値観の改革が行われ、「疎に移行したくてもできない人」が現れ、逆に「疎でのびのびと活動している人」に羨望の眼差しが集まります。
この開疎化という考え方は、「開疎化☓○○○」みたいなトピックで(例えば、オフィス、テーマパーク、ショッピングモール、繁華街、旅行、リゾート、インバウンドなどなど)深い議論ができてしまう言葉だと思いますが、ここではトピックを『開疎化 × 地方、地域のビジネス』というカテゴリに絞って考えたいと思います。
開疎化 × 地方、地域のビジネスの可能性
地方、地域=疎、という認識を持つ方もいると思いますが、実際のところは各地方、地域も都市化の概念で作られています。政令指定都市の制度なども大都市制度の1つです。法定人工が50万以上の都市が対象になるので、前述で上げた「密」にあたります。
その地方、地域において、祭事、シーズナリーのリゾート、ショッピングモール、インバウンド需要で盛り上がる市場など、様々な分野で「密」、さらに「密閉」になっている部分は多いです。
密の状態の発生には、1つには需要と供給がアンバランスさが関係しています。人気を博しているコンテンツは、情報が十分に市場に共有され、情報をキャッチアップしたユーザーが体験をし、その体験がSNSなどでシェアされ、さらに多くのコアユーザーが生まれる。このような流れが、需要をどんどん膨らましていきます。
ここでポイントだと考えているのは、一定のビジネスにおいては「情報の流通」がベースにあるということ。つまり、今後「開疎化」のコンテンツが需要を増してくのであれば、その「疎」の情報は誰が持っているか(認知しているか)、ということを考えると、これまでの都市化の価値観の中で醸成されていた「情報を持っている人」と「情報を持ってないない人」の立場が逆転するのではないか、と考えてます。
例えば、「田舎の空き家に住みたい」というニーズがあったとします。
これにはまず「田舎の空き家」が必要ですが、おそらくググってみても情報の鮮度を保った「現在空いている田舎の空き家の情報」は、そう出てこないと思います。ましてや、その空き家が誰も持ち家で、売却や賃貸をしたいと思ったときの問い合わせ先の情報など、皆無です。
ここでの情報を持っている人は、その空き家の界隈に住む住民であり、地元に住む人です。都市化にいる人では、とてもその情報にリーチはできません。
情報の圧倒的不平等さ、がこれまでと全く違う形で押し寄せます。
デジタル化が進み、さらにこのコロナ共存社会においては、「供給がそもそも限られた量しかない、希少性の高い情報」にニーズが集まるようになるのだとすれば、「地域、地元の情報資産をビジネス化すること」は十分に可能だと思うわけです。
疎を軸にしたビジネスモデル。主役は、地域や地元。
疎をベースに考えると、様々な領域でこれまではビジネス化が難しかった内容が、ビジネスの可能性を秘めてきます。
別の角度で考えてみると、上海で早々も再開したディスニーランド。密✕密閉の代名詞のようなテーマパークは、beforeコロナとwithコロナでどのように変化したでしょうか。
○アトラクションの待機列はソーシャルディスタンスが保たれるように設定
○入園もフリーから完全招待制
○一日の入園可能者数、1/3へ抑制https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58926010R10C20A5MM0000/
確実に疎に向かい、そして需要と供給のバランスが崩れ、価格が高騰しプレミアム感が増すことになります。
では、そういった「需要と共有のアンバランスさ」を軸にして、疎のコンテンツを考えると、beforeコロナの社内において需要がなかったので、かなり限られた希少性の高いコンテンツになることは間違いなく、そこに「開疎化ニーズ」に伴い、多くの需要が集まります。
さらに「田舎の空き家に住みたい」ということを考えだけで、以下のような周辺課題とその課題解決のためのサービスに対してニーズが集まります。
○空き家のリノベーション
○ラストワンマイルがラストツーマイル以上になる
○移住した人は地元に馴染むために、なんとか地元住民と関係性を強めようとする
○地域、地元といったかなり限られた内需の取り込み
○当然のように空間と距離を超える、モノ・コトのデジタル化と体験の置き換え、利便性の追求
○近代的、モダンよりもレトロ、クラシック、シャビーさとテクノロジーの融合
このような形で疎を中心に形成される新しいビジネスモデルは、どれもが「地域、地元のもの」であり、ビジネス化できるのは「地域、地元のニーズとリソースを理解している、そのコミュニティに属する人」であり、その価値は高まり続けるのではないでしょうか。
ここでのビジネスでキーになるのは、間違いなく地域、地元の人なのです。
今こそ情報の発信と地域を主体としたビジネスモデルのチャレンジを
地方、地域の方々がそのポテンシャルに気づき、情報を発信してコンテンツ化していくことができれば、確実にこれまでの都市化から需要を地方、地域に向けることができると思います。
先日のNHKニュースでも取り上げられていましたが、確実の地方需要は高まっています。
現状は移動の制限が激しく、なかなか需要に対しての信頼性がないかも知れませんが、今こそ地方、地域を軸にしたビジネスチャレンジのタイミングです。
地方、地域の情報を集結させ、皆さんで一緒に「開疎化」の流れにおけるビジネス機会を考えられたら、新しい日本の産業をつくっていくことができるのではないでしょうか。