ひ弱な僕が過酷な異世界で生き残る方法【試作】

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どんな感じに表示されるのか、お試しで。

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 目の前にメチャクチャ顔色の悪い美しい人? がいて、僕の方を凝視すると必死な形相で人差し指を突きつけてきた。

『丁度いい! あなた今、死にましたね?』
「あっ、ハイ⋯⋯多分?」

 小さい頃から心臓が弱くて病院生活が長く、薄々覚悟はしていたけど、ついに大きな発作が出て死んでしまった⋯⋯と思ったら、唐突にこの白い世界に来ていた。
 翼が生えたその美しい人はブワッと涙を流し、僕の両手をしっかりと握りしめて、こう言った。

『あなたの願いを一つだけ特別に叶えましょう。だから、どうか私の世界に転生して頂けませんか!?』
「ええ? 転生? どういう事ですか?」

 まさかアニメとかでよく見る異世界に転生して⋯⋯みたいなアレ!?
 え、僕が!?

『決して死んではいけない存在が死んでしまったのです。今すぐ、どうにかしないと!』

 何やら、とっても焦っている様子。

「相当お困りのようですね。僕で良ければお手伝いさせて貰っても構いませんが、そんなに有能な人間ではないので⋯⋯世界を救うとか、勇者になれとかは、ちょっと無理といいますか⋯⋯」
『そんな下らない事はこちらの世界の住人が全てやります! あなたにお願いしたいのは、これから転生する先の存在を少しでも長生きさせる事。それだけです!』

 あ。結構、簡単そう?

「それなら、まぁ⋯⋯」
『おお! 感謝いたします! 異世界の尊き魂よ!』

 咽び泣く異世界の神様? を見て、ちょっと微妙な気持ちになる。
 大丈夫かな、この神様。

『うう⋯⋯良かった。本当に良かった。そうだ! 転生先でのご希望はありますか? 先程も説明しましたが、神様権限で何でも一つだけ叶える事が出来ますよ!』
「何でも一つだけって?」
『例えば、魔法全般を使いこなせる様にしましょうか? オススメです!』
「あ、魔法のある世界なんですね?」
『はい。すぐに魔道士になれますし、日常生活でも凄く便利ですよ!』
「でもなー」

 魔法って、ホラ。
 呪文とか魔法陣とか覚えるの多そうだから。
 僕、寝たきりだったから勉強苦手なんだよね。

『では、精霊使いは如何ですか!? 可愛くて綺麗な幻想生物と交流できる権限を今なら無料で!』

 神様は腰に手を当てて、人差し指を僕に突きつけ、ウインクしてきた。

「あの、僕そんなに交流とか出来ないと思うんですよね。人付き合いが苦手で⋯⋯」
『それは……本当に困りましたね』

 神様が腕を組んで難しい顔をしたので、僕は何か便利そうなのはないか⋯⋯と考えを巡らせる。

「あ!」

 思いついた!
 コレだ! コレしかない!

『何か思いつきましたか!?』
「転生先で超能力を使えるように出来ますか?」
『はて? 超能力⋯⋯とは?』
「えっと。僕のいた世界では、超能力⋯⋯つまりPSY(サイ)という便利な力があって⋯⋯」
『サイ、ですか。私の世界の概念にはありませんね。理解するために少しだけ貴方の知識を探らせて頂きたいのですが、宜しいでしょうか?』
「良いですけど、どうやって僕の知識を⋯⋯?」
『では、失礼して』

 神様が僕の額に手をかざすと、視界がグルンと一回転したと思ったら、神様の腕の中におさまっていた。

『驚かせてしまってすみません』
「いえ⋯⋯」

 僕が頭を振ると、神様はニッコリと笑った。

『良かった。あなたの世界の超能力⋯⋯SPYは、私の世界でも使えるようです』
「それ本当ですか?」
『はい。早速、転生先で使えるようにしておきますね。でも、若干違う所がありまして』

 神様はニコニコと楽しそうに説明してくれた。

『貴方の世界のSPYは生命エネルギーを使うみたいですが、これから転生する先で貴方が使うSPYは貴方の体内にある所謂エーテルという力を使う事になります』
「エーテル?」
『そうです。貴方にしか使えない特別な力ですので、くれぐれも慎重に使うようにして下さいね?』
「はい! ありがとうございます!」
『こちらこそ本当にありがとうございます。どうか無理をしないように、是非とも長生きしてください』
「出来る限り、頑張ります」

 こうして僕は成り行きではあるが、異世界の神様の願いを叶える事にしたんだ。

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 パチリと目を開けると、薄暗い天井が見える。
 視界をズラして周囲を伺うと、何だかカビ臭て薄暗い陰気な場所だった。
 埃っぽくてケホッと咳き込むと止まらなくなる。

 あ、これヤバい奴。
 こんなに咳き込んだら心臓が止まっちゃう⋯⋯と身構えたけど、そうはならなかった。

 そうだ。心臓病だった僕は死んで、新しい身体に生まれ変わったんだ。

 やったー! とガッツポーズした瞬間、扉が開いた。

「ようやく起きたか」

 長い黒髪で顔色の悪い男性が僕の方に歩み寄ってくる。
 手に水の入った木製のタライのようなものを持っていて、僕が寝ているベッドの脇のサイドテーブルに置いた。

「あの⋯⋯貴方は?」
「は! 私が誰か、だって?」

 笑い飛ばした男性だったが、真顔に戻ると口を開く。

「え? 本当に⋯⋯覚えていないのか?」
「は、はい⋯⋯すみません」

 えーっと。
 そういえば、神様が転生っていうから勝手に赤ちゃんの頃から始まるのかと思ったけど、もう大分大きいよね? この身体。

「私の名はアドラマリク。そして、お前の名はラギアンという」
「ラギアン⋯⋯僕の名前」

 僕の新しい名前はラギアンか。
 しっかり覚えよう。

「あの、アドラマリクさん?」
「うむ。何だ?」
「ここは何処ですか? 貴方は僕の親戚か何か?」
「ここはマカイだ」
「マ、カイ⋯⋯?」

 え? マカイ⋯⋯今、魔界って言った?

「本当に何も覚えていないのだな。ラギアン」
「はあ⋯⋯すみません」
「ここは魔物たちの棲家である魔界で、私はお前を下界から攫った誘拐犯だ」
「何故、僕を攫ったのですか?」
「お前が必要だったからだ」

 答えになってない⋯⋯けど、まあ良いか。

「目的はお金ですか? それとも僕を食べる、とか?」
「どっちも違う⋯⋯と言いたい所だが、後者が近いな」

 ありゃま。
 いきなりピンチ?

「うーん。僕、出来る限り長生きしたいんですけど、どうしたら良いですか?」
「お前、長生きしたいのか?」
「はい。少しでも長く生きたいです。雑用でも何でもしますから、食べるのはその辺にそっと置いといて働かせて貰えませんか?」

 僕はダメ元でお願いしてみた。
 するとアドラマリクはボソッと囁く。

「⋯⋯では私の奴隷になるか?」
「貴方の奴隷になれば長生き出来ますか?」
「ああ。私は不老不死だからな。私の奴隷となり忠誠を誓えば、古(いにしえ)の契約に基づき不死に近い状態になるだろう」
「では、アドラマリクさん。貴方に忠誠を誓います!」
「⋯⋯」

 アドラマリクは目をパチクリさせた後、頭を抱えた。

「お前、奴隷になるという意味を分かっていないだろう?」
「正直、サッパリわかりません。でも、貴方の奴隷になれば不死に近い状態になるのでしょう?」

 首を傾げると、アドラマリクはため息をついて右手を持ち上げた。
 するとアドラマリクの手に、何処からともなく黒いモヤが集まってきて、やがて黒い首輪を形創った。

「わあ、凄い! コレって魔法ですよね?」
「そうだ。これを首に巻くと私の奴隷となる⋯⋯だが、私は割と⋯⋯いや、かなり特殊だから良く考えて」

 アドラマリクはゴチャゴチャと何か言っているが、僕は目の前にある首輪を手に取る。
 首輪は僕の首に触れると自然といい感じに巻き付いてきてカチャンと僅かな音を立てた。

「これで良いですか?」
「⋯⋯お前は⋯⋯」
「ん? 何です?」
「いや、私が悪いのだな。あの時のショックで頭がおかしくなったのだろう」

 アドラマリクは首を横に振りながら、哀れみの目で僕を見つめてきて、僕の胸に手を添えた。

『我が奴隷、ラギアン。私に力を与えよ――』

 力を、与える⋯⋯?

 そう思って首を傾げた瞬間、急に心臓が熱くなって胸を鷲掴みにされたような感覚が走った。
 これは、身に覚えのある感覚だ。
 そう、心臓発作の時に似た――。

「ラギアン。もう良い。落ち着け」

 アドラマリクの冷静な声を聞いて、僕は身体の力を一気に抜いた。
 僕の身体はベッドに逆戻りし、目の前のアドラマリクは目に見えるくらいの禍々しい黒いモヤを身体に纏っている。
 そして、僕のベッドの周りには、先程まではいなかった筈の人影が幾つも立っていて。

『魔王アドラマリク様。御用命を』
「とりあえず下界の偵察と城の修復を」
『御意』

 複数の影はいなくなり、再び二人きりになる。

「貴方が、魔王⋯⋯?」
「お前が、そうさせたのだ」
「⋯⋯?」



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さて、どうなりますか。

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おお、良いですね!
三点リーダー問題も解決したし、イケそう!

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