マガジンのカバー画像

『雲の色とか』

79
既発表の自作短歌を集めています。 H26年1月~現在。 H28年「異人の祈り」にて第一回石井僚一短歌賞候補 H28年7月号から短歌人会。
運営しているクリエイター

2014年8月の記事一覧

平成26年短歌研究新人賞 応募作品三十首

【小熊座】  (*は予選通過として雑誌に掲載)

未来という未だなきものを求めては去りゆく月の行く方をみる

動きゆく分子の流れすみずみに感じて過ごす今という時

曖昧な天気に揺れる決断は孤立へ向かうような生きかた

毛を舐める音の聞こえる寝室で東雲を待つ薄暗い窓

蛇口から滴るふしぎ吾が猫はシンクに降りて頭を濡らす (*)

洗濯を始める昼に思いやるメトロポリスで絵筆もつ吾子

洗濯は一回で済み

もっとみる

「うたつかい」2014年7月 第19号

【海】(テーマ詠)

ゴーグルで日がな一日浮いていた凪いだ港のあの島の海

【星の夜のレッスン】(自由詠五首)

ばらばらと降りだす雨は激しくて見逃していた飛び去る車

満月に影を作って待っている星を数える修行の終わり

待っている雲間に見える満月を今日はどこかで地球が隠す

右腕で弦を擦って弾く気持ちその少しだけミューズに分けて

ひとまずは弓を持つ手の力抜き屋根を透かして月を見てみる

「うたつかい」2014年4月 第18号

【色】(テーマ詠)

日の足は長く延びたり西嶺に茜色ある退社時のそら

【巣立ち】(自由詠五首)

街路樹に露わになりし鳥の巣は巣立ちし後の吾が家のごと

吾子おらぬ会話はにやあで済みにけり人の声なき家の広がり

珍しく膝にのる猫いき物は一人と一匹 はだ温かく

吾が猫のフレンチなれば缶詰は見向きもせずに吾のみ食めり

空き家なる鳥の巣さらす街路樹にまた新しき主の来るらむ

 (一部の助詞を改変し

もっとみる

「うたつかい」2014年1月 第17号

【本】(テーマ詠)

憧るるひとみな本の中に居り思ひて籠る十九の春に

【野分】(自由詠五首)

野分くる湿り気多き肌ざはり雲のちぎれて陰影深し

上空にカラス舞う空うす暗く野分なごりの風の渦巻く

太き雲割れて見えたる青空は遠くに澄みて変はらずにあり

爪を切る夢で目覚めし赤黒く雲あわはれぬ東の空に

空燃える東の空に駆けだしぬまろびて土手ゆ見上ぐ朝焼け

「うたのわ」投稿歌 H26年6月

濕原を繰り返しゆく人ありて足を取られて頭を垂れる

青空を喜ぶ鳥の歌ふやう想ひのままに言の葉つづる

降り續く雨の小川を溢れさす胸の奧なる思ひは知らず

窓からの夕日の色の足早に翳るメールに強がりいひぬ

撫でてゐた猫が突然目を見張りあなたが來たのこんな夜更けに

人をみて小言のしたくなる朝は爪の汚れを落として研ぎぬ

白き顏天を仰ぎて祈るやう片隅で咲く十藥の群れ

懷かしい思ひ出醒ます香りしてア

もっとみる

「塔」2014年3月号

【若葉集】掲載歌

モデルガン手にした気持ちに戦きて返品したり幼き吾は

暮れて行く空の青さを追ひにけり取り残されし師走の午後に

日輪の吹雪に霞む風音に乾いた銃のこだま混じりて

遠くより無事とのメール届きたり独りの夕餉作る夕べに

「塔」2014年2月号

【若葉集】掲載歌

初霜の白く染めたる川岸に朝露うまれ家々を撫づ

をうし座のアルデバランてふ赤星をともに見上げし最後の冬に

騒がしき外部の音は消え失せて一人たたずむ冬迎えたり

桜木の紅く色づく立冬に来年のこと話し笑へり

「塔」2014年1月号

【若葉集】掲載歌

川岸の気温の二度程低くしてこころの動きにぶる朝もや

山車を牽くお囃子の声乗る風の揃ひ始めぬすすき揺らして

強くなる雨風告げる野分来るうちに籠りて湧き立つこころ

残されし者には続く冬草の枯れても絶えぬ流れのままに

【短歌詠草 うたう☆クラブ】 2013年11月30日〆切分

(投稿歌です。採用の有無は不明(>_<)、御免)

朝まだき夢の続きを五線譜に書き留めておをりはてなき祈り

濡れ落ち葉踏みしむる道あさひさし見上ぐる西に大いなる虹

鍋底に残りしがんもやはらかく触れると裂けて溢れる中身

懐かしき声に振り向く川上を目指して飛びぬ 白鳥来たり

土曜日のボサノバ朝のラジオから誘ふが如きゴーギャンの島