マガジンのカバー画像

鹿もしれない詩かも

24
詩のようなものかも、令和2年7月23日。
運営しているクリエイター

2020年12月の記事一覧

ホウレン草異譚 ―記憶という不在―

ホウレン草異譚 ―記憶という不在―

いただいたホウレン草は
ちぢれてて
お浸しで食べると とても甘く果たして
ポパイのホウレン草は
どうだったのか
缶詰でも途端に
上腕二頭筋が盛り上るのだから
水っぽくはないだろう
それよりもあれほど食べて
父のように
腎結石にならなかった不思議に
うちのオリーブ
来年は結実するのだろうか

留置所でなお虚勢をはる姿は
それでも学生時代の面影があり
一目で彼だと分かった
彼は僕だとは気付かなかったの

もっとみる
Double helix

Double helix

「いや、実際見てなかったんです。でも
どうして見なかったんだろう。」
警察官は何度も尋ねてきた
なぜ右を見なかったのか
何事にも理由があるのだし
彼は何か分りやすい
答えが欲しかった、曰く
口論してた、
急いでた、
落とした携帯を
取ろうとした、とか。
僕は、
____少しずつ思い出した
___いま左側に過ぎた
__池に咲いていた
_蓮の
網膜に残った
花を見ていた

生の音楽は久しぶりだった

もっとみる
病木 わくらぎ

病木 わくらぎ

いつもなら、虫の声が無いのを聴けていたはず。しかし今年は、気付けばもう冷たい空気が鼻の奥まで入ってくる。山の色は既にモノトーンだった。

12年育てていた栃ノ木ね、今年は夏に突然葉が枯れたでしょう?

よく見れば枝はかさかさ、もうすっかり枯れていた。毎日変わらず庭にすっくと立っていたのに、こんなに既に蝕まれ、もう死んでしまっていたなんて。

それは誰も彼もがそうでしょう?

「MRIで総腸骨動脈

もっとみる