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よだかの星

4月からスタートした朗読セミナーも、佳境へと向かっています。
最後の朗読テキストは、宮澤賢治の短編「よだかの星」です。
今日の講座が始まった時、心の中で、ああ、自分の番はどの部分の文章になるだろうか、と不安になりました。そうです、このお話は、涙なしでは読めない作品なのです。

前の席の方から朗読がスタートしました。後ろから2列目の席のわたしは、心の中でホッと胸をなでおろしました。物語のはじまりの方が、哀れなよだかの描写に泣けてくるので、前半は読みたくありませんでした。

冒頭の一文「よだかは、みにくい鳥です。」
よだかと自分の共通点が思い浮かび、涙がじわり。
外見から、いつも他の鳥たちに嫌われて悪口を言われる、気の毒な鳥、よだか。しまいには、名前を変えないと殺すぞ、と鷹に脅されてしまいます。
弟のかわせみに別れのあいさつを告げに行き、旅立つ前に巣の掃除をして、身なりをきれいに整えます。そしてお日様や夜空に輝く星に、そちらに連れて行って欲しいと乞うよだか。

皆で順々に読み進めていき、ついにわたしの番です。涙なしでは読めないところから、ちょうど外れていました。
今の世の中にも通じる、東の白いお星様の言葉、「星になるには身分と金が必要だ」と横柄に言い放ち、悲しいシーンの寸前、覚悟を決めて空に飛び立っていく情景を読みました。それはそれで難しかったのですが、平常心で読めたことにホッとしました。

先生からのアドバイスは、
語尾の「~しました」の「た」が強く、「たあ~」と発音しているので、母音の「A」を抜いて、無声化するようにというものでした。
アドバイスのとおりに読むのが難しく、何度もやり直しです。

わたしの後に、物語の終わりにあたったクラスメイトは、「もう心の琴線に触れてしまって」。いつもはとても上手に感情表現しているのに、あえてクールにしないと、読めない様子でした。

いよいよ、朗読セミナーはラスト2回を残すのみ。
来週と再来週は、各々がラジオで読むことに決めている文章をブラッシュアップしていきます。

朗読セミナーも、普段のボイストレーニングのレッスンと共通点があります。だんだんと回を重ねるごとに息が合い、全員で響きのボールを回す感覚が生まれた、今日の講座でした。

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