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【私の年のせいなのか ここが日本じゃないからか6】ビザ取得大作戦(4)まずは飛行機、それから保険

 ビザ申請の必要書類の中に、「一年間の医療保険」というのがある。勿論、海外旅行保険には入ろうと思っていた。いざというときには死体を日本まで運んでもらわないといけないし、自分の怪我や病気も然りながら、人様に怪我をさせたとか、物を壊したとかいうときのために保険は大事だ。
 保険に入るとなると、いつ出発かが決まっていないといけない。ビザのために保険、保険のために飛行機。まずは飛行機の確保からだ。

 自分で検索もしてみた。が、なんだかよく分からない。これをクリックしたら予約できるの? これって往復の料金なの? 帰りの便の日にちはどうなるの? 実際、この便が本当にお得なの? 他にもないの? と検索を続けると、いくらでも時間が経ってしまう。私は当時、自分の仕事人生のフィナーレ、最後の3年担任の3学期、教科とクラスのことでてんやわんやだった。こういうことは多少お金を出してもプロに頼んだ方がいいんじゃなかろうか?と思った。これが20代だったら、金を惜しんで頭と時間を使うだろうさ。退職前の60代なめんな。金より時間の方が惜しい。そして、頭は働かない。

 「プロ」にあてがあったのだ。数年前にエデュトリップという、教育関係+αの人たちでフィンランドの学校+αを視察したときにお世話になった、個人がやっている、京都の旅行社。その後、定期的にニュースレターをいただいており、ここなら、と思った。
 1月5日、メールを送る。航空券の手配と、保険会社の紹介をお願いした。出発の日程は6月10日、月曜日に設定した。というのは、その前の土日に、愛知県で競技かるたの大会があり、スタッフとして参加したかったからである(すみません、唐突ですね。私、趣味として競技かるたを少々たしなんでおりまして…)。娘の出産予定が7月上旬と聞いていたので、その前に余裕を持って行きたいと考え、かるたの大会が終わり次第、出発することとした。

 完全に私の念頭になかったことが一つ。7月にパリでオリンピックが開催される。そのため、6月中旬以降は飛行機が混み合い、代金も上がるらしい。
 ロシアのウクライナ侵攻により、ロシア上空を飛べない(それって、地球上の相当な割合を飛べないってことじゃないですか?)ということもあり、選択肢は限られているようだ。旅行社から提案された飛行機は、羽田からインチョン、インチョンからパリ、というもので、真夜中に羽田を出て、インチョンで6時間待つ。これはしんどい。
 しかし、自分で調べてみても、同じぐらいの料金で条件が遙かにいいという便は見つからない。復路の日程変更を手配する手間のことを考えても、やはりプロに頼った方が安心な気がする。
 というわけで、多分、お財布的には賢明な選択とは言えなかったかもだけど、旅行社に航空券予約の手配を依頼した。結果的には、この後も、何かと気に掛けていただき(出発前には持ち物のことや乗り継ぎのことなど、細かな点までアドバイスをいただいた)、この安心感はお金よりも大きいと思った。
 因みに往復で30万円ちょい(中部国際空港→羽田、パリ→ボルドーも含めて)だったんだけど、2月の時点でこれで、この後、急速に円安が進んだことを考えると、もうちょい遅かったら、どうなっていたやら。

 さて、次は保険だ。最初に旅行社にメールしたときに、60歳以上で入れる旅行保険についても紹介してもらった。その結果、やはり京都にある保険会社から、パンフレットが送られてきた。
 例年、卒業を前にした生徒に「これからあんたたちもクルマを運転するようになると思うけどね、絶対に保険はケチっちゃダメだよ」と言っている手前、自分の海外旅行傷害保険も、がっつりしっかり掛けねばならぬ。どれ、見てみよう、どれが一番手厚いのかな?
 …えーっと、これは、保険料、あれ、一桁違ってるってことはない…よね…? 50万円ですか、そうですか。
 飛行機料金よりもずっと高い。しかし、考えてみたら当たり前かもしれない。公務員やっていたときの一年間の健康保険の掛け金を思えば、一年の間に海外の病院でお世話になる可能性、誰かを怪我させる可能性、そして死体を運んでもらう可能性とかを考えれば、このくらいは掛かっちゃうのかもしれない。
 それにしても、もしビザが取れなくて3か月で帰ってくるとなると、保険料ってどうなるんだろ。こりゃもう絶対、確認しないと。速攻電話しましたよ。「旅行出発の前まで、キャンセル、変更していただいてOKです! いつでもご返金いたします!」…。あああ、日本語で、すぐに、明確に、こちらが求めていた返事がもらえるって、なんて幸せなんでしょう。泣きそう。

 こうして、旅行社と保険会社に世話になった。そして、その恩を仇で返すように、私は支払いを待ってもらった。というのも、銀行口座に金が必要だったからである。

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