Withコロナ、初の対面通訳

ちょうど1年前、コロナ禍も本格化(?!)し、会議やイベントが次々とキャンセルされ、収束まで数年はかかると言われて通訳者のほぼ全員が路頭に迷っていたころ、私にとっても他人事ではなかった。

通訳をするだけでなく、通訳者養成もしている者としてどうするべきか真剣に考えた。

当面、通訳需要がないのに通訳者養成をすることは正しいことなのか? コロナが収束するころには完全にAI通訳がさらに進化している可能性が高い中、本当に将来人間の通訳者が求められるのだろうか?

そこで私なりに考えて出た結論は「YES」。

とりあえずは遠隔通訳、そして徐々に対面通訳も戻るだろう。案件依頼というのは急なことも多いことを考えるとコロナ禍で時間がある間にしっかり訓練をして、需要が戻った時にはコロナ前よりワンランク上の通訳ができるようスキルアップを目指すことは正しい選択に違いない。

「2年間は対面通訳がないかも」と聞いてかなり落ち込んだけど、「じゃあ、2年後に対面通訳の需要が戻った時、自分は現場に出たいか?」と自問した時の答えもやはり「YES」だった。

だったら「同じ気持ちでいる人にこれからもトレーニングを提供したい」と思って、グリンズ生にはそう呼び掛けた。

幸い、志を同じとする仲間に多く恵まれて1年がたった。

この1年、コロナでいったんは仕事を失った受講生も多くが再採用されているし、「ワンランク上の仕事に就けた」、「スキルアップが認められて昇給した」、「資格試験に合格した」、「某大手通訳学校を卒業/進級できた」、「同通グランプリの予選通過」など嬉しい報告もたくさんもらえてやりがいを感じている。

そして自分自身はどうなのか、というと…。通訳トレーニングを提供しながら、自分が狙っているタイプの仕事の依頼があれば二つ返事で引き受けられるよう準備してきた。

色んな分野の通訳経験をしてきたけど、ここ数年で、自分がフォーカスしたい仕事の種類は限定されている。国際機関の会議と外交通訳。

遠隔通訳を夜中や早朝にやっている人もかなりいるみたいだけど、それはすべて避け、引き受ける仕事も限定し、あとはグリンズと大学院での指導に全力を尽くしてきた。おかげで健康的で充実した生活を送っている。

そんな中入った問い合わせ。「来週こちらに来れますか?」フランス語訛り、某国際機関から。

幸い、スケジュールの調整がつき、海外渡航のハードルもクリア。明後日出張予定。

昨日PCR検査も受けた。先ほど結果が届き、結果はNegative.

Negativeという言葉がこれほどPositiveに聞こえるのは珍しい。

まだEssential travelしか認められていない(不要不急の渡航禁止)状態だが、依頼者からは「Essential work」だという認定書(Certificate)も送られてきた。

あとは、無事目的地に到着し、入館許可証をもらい、会議室を探し出し、おそらく通訳者1人1ブース体制にて某会談の同時通訳をすること。

この日のために、この1年トレーニングを続けてきたとも言える。

成果を発揮して、笑顔で教え子たちに報告したい。

2021年5月24日

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