小説【博物少女 ヒロメリエ!】#1-09
第1話 SCENE 4-①
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「まずは──そうね、
この博物館は日本で最も古く、都内でも最大級の国立博物館で、
収蔵数は一一万点以上、常時四〇〇〇点展示されているらしいわ。
とても一日じゃ回りきれない広さね。
そしていまキミがいるこの場所はエントランスロビー。
来館者が歴史の旅に出かけるための搭乗ゲート、と言ったところかしら。
あら、ふふふ……いまボク上手いこと言ったわね」
ちょっと待て。“すべてお話しましょう”ってまさか博物館の成り立ちから
全部話すつもりだろうか。それは勘弁してほしい。
ここで私はふと、小学校で同級生だった佐々木くんのことを思い出した。
うちの小学校の全校朝礼は、校長先生の話がとにかく長かった。
そんな中佐々木くんは自ら貧血のフリして倒れ込む"職人"で
そのフォームはまさに芸術的。視界の端から見える佐々木くんの
見事なまでに美しい倒れ込みは先生方の同情を誘い、
校長先生も舌を巻くほどにならぬ話を巻いて話を切り上げるほどだった。
彼の功績か、朝礼は体育座りで良いことになり、以降
私たちの身体的・精神的負担は劇的に緩和されたのである。
(いざとなったら私が佐々木くんになろう)そう決意した矢先
「館内はこのあとすずりちゃんに案内してもらうとして、とりあえず
キミをこの博物館の館長に任命した理由をお伝えしようかしら。
気が進まないけれど」
Xはなんと自ら話を切り上げ要点を話し始めた。
というか気が進まないってなんだよ。
「最近、この博物館では不思議な出来事が度々起こっているのよ」
……ん?
「夜な夜な館内を奇怪な生物が徘徊しているとの噂で、展示物を
汚したりディスプレイのガラスをドンドンと叩いたりする事件が
頻繁に起きて困ってるそうなの」
どうしよう、話が急にオカルトになってきてしまったぞ…。
<②に続く>
<前回>
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