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法人向けソリューション営業において「提案にサプライズは無い」


友人への誕生日祝い、恋人へのプロポーズ、職場メンバーへのお祝い。

世の中至るところに、サプライズ、が仕掛けられています。
そして、その大半が受け手を喜ばせ、一生に記憶に残る素敵な思い出になっているでしょう。

ところが、世の中には極稀に「サプライズ」が全く喜ばれない、時には相手から失望を買うケースが存在します。

そうです、それは「法人顧客へソリューション提案する」ケースです。


では、なぜ「サプライズの提案」をすべきではないのか。


まずは事例(実際にあった話)です。

社会人2年目の秋、私は中途採用支援を行う大手人材会社で、メーカー向けに法人営業を行っておりました。
社会人2年目と言えば、業界についてのインプットも増え、当然のことながら、一人で営業に行くケースが増えます。

とあるベンチャー企業のお客様がいらっしゃいました。


創業から数年のタイミングで担当させていただき、当時の社員の半数は自分経由のご縁、という状態でした。

その当時の私は「◯◯社の社外人事は自分だ」くらいの感覚で居ました。

そんな最中、採用を加速させたい。エンジニアを◯◯名採用したいので、相談したい。良い案があれば提案してほしい。というご連絡をいただきました。

二つ返事で少し先の商談日程を決め、
過去のご支援した方の職種、経験スキル、また社内の採用体制を元に綿密な提案を作り込みました。

提案する施策は複数、金額規模も大きい内容であったため、当時の上司や他部門の採用企画担当にも同席を依頼し、商談に臨みました。

先方の代表含めて、総勢6名の商談が始まって早々、担当営業である私から提案内容を切り出しました。

私「今回大型採用ということで、採用チャネルを増やす前提でご提案内容を作ってきたのですが、」

先方人事「まったくもって同感ですので、〇〇(競合他社)の求人広告を今日から掲載してます。またダイレクトリクルーティングも必要だと思って、昨日◯◯社とも契約しました!」

私「え・・・?」

先方人事「え・・・?伝えてなかったでしたっけ?」

私「・・・はい。聞いてないです。」

先方人事「あらそうでしたか。貴社だったらヘッドハンティングとかもやっているのと思いまして、本日その話を聞きたいと思ってました!」

私「(やばい・・・・)」

弊社側の同席者「(え・・・?求人媒体の必要性を提案するんじゃなかったのかよ)」


法人営業を経験したことがある方なら、イメージつくかと思いますが、商談の場が凍りました。

私が綿密に作成し持参した資料は「なぜ求人広告、ダイレクトリクルーティングが必要なのか?」を説明したものでした。


先方社長「で、提案内容って何ですか?」

私「・・・採用チャネルを増やす、つまり求人広告とダイレクトリクルーティングがなぜ必要か、という内容でして」

先方「そんな事わざわざ言われなくても分かっているよ」

私「・・・すいません、出直します。」

———————

・お客様が感じている大型採用への課題意識
・お客様がすでに検討している取り組み、施策、スケジュール
・当日の商談では自分たちに何を期待しているのか

上記はすべて事前のコミュニケーションで確認可能でありましたが、当時の私は「先方をアッと言わせたい」という気持ちが先行し、事前にコミュニケーションも無しに提案内容を作成していました。

法人営業において何らかのソリューションを提案する場合、顧客は何らかの課題認識を持っていて、それを解決したいというケースが多いです。

特に、「提案してほしい」という要望が顧客からあった今回のケースでは、「課題認識を持っている」ことはほぼ間違いありません。

にも関わらず、今回のようにお客様側の課題認識を把握しないまま、提案しても、顧客を動かすことできません。

さらに、顧客が自分に(商談)に何を期待しているか?を把握していなかっため、費やした準備が一ミリも顧客のためになりませんでした。


恋人や友人であれば、関係性が長いこともあり、事前に事細かく確認しなくても、相手が期待していることが分かるでしょう。

一方で法人顧客へのソリューション提案を行うケースで、確認せずにすべてのお客様情報を自分が把握している、ということはまず有りえません。

もちろん、商談前に上記を知ることができない、商談でのディスカッションの中で課題設定する。そういった商談ケースもありますが、当時の私は、事前のコミュニケーションが可能であるにもかからず、確認を怠りました。


仮説を立てることは重要ですが、仮説を元にした提案内容で受注率を上げることには限界があります。

どれだけ顧客について考えても、結局は運ゲーになります。


月日が経ち、提供するサービスが変わりましたが、現在は

・お客様はそもそも課題認識を持っているのか?その課題認識を何なのか?

・課題解決に向けて検討していること、すでに行っていることは無いのか?

・自分に対して何を期待して時間(商談の場)を作ってもらっているのか?

上記を理解した上で提案内容を作成すること。

そして、事前にヒアリングした内容を元に作った提案内容を顧客に開示すること。そしてその内容について顧客からのFBをもらうこと(サプライズにしないこと)を実践しています。


具体的な提案といったフェーズが進んだ商談を行う際に

・顧客側は自分が当日聞く内容をちゃんと把握していますか?
・事前に提案内容のベースを見てもらい、フィードバックはもらいましたか?
・当日訪問してから何を聞きたいか聞いていませんか?
・顧客から今日こういった話を聞きたい、と商談の場になってから言われていませんか?


「提案にサプライズはない」

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