激しく雨の降る深夜の池袋北口を、また負けて彷徨う一人の中年男

-2022年9月24日未明01時42分-

-オレは、正気を取り戻し、我に帰って愕然とした。大学時代を過ごした、池袋の街の北口であることだけは、すぐに分かった。

-白いシャツの右腹の辺りが血だらけだった。激しく酔っていて覚えていないが、右肘の下あたりを深く切っていて、なかなか血が止まらない。3日後の、これを書いている時点でも、段々凝ってきてはいるが、完全に塞がってはいない。

-この切り傷、おそらく駅の階段かなにかで転んで切ったものであろうが、この癒えない切り傷が、その夜のオレの心情を象徴していた。

-前の晩、短期間で女帝の座に登りつめた、MWAの新しいバーで、オレは友人に借りた5000円で飲んでいた。来た時点で、空腹に大量のハイボールを流し込んでいた。そして、店でのオレの行動について、ほぼ記憶が欠落していた。

-友人が言うには、どうやらオレは、女帝の短期間の出世に関して、その内情を執拗に追及していたらしい。まあ結論として、それは閨房での力によるものらしいが、ホントだとしたら、松本清張の小説みたいな話である。黒革の手帖、みたいな。

≪カイワイ17年の飲みのキャリア≫

-それでもまったくウダツの上がらないオレ。比べてしまう。17年と3ヶ月。オレは女帝に嫉妬していることを正直に認める。そして、芽生え始めていたほのかな恋心も…

-まあ正直、齢47のオレにとって、店の若くてカワイイ娘たちは、年齢が離れ過ぎて、恋愛対象としては考えにくい。ゆえに女帝、なのだが、女帝もダメじゃないすか。は〜ヤル気出ね~。

-だから女帝、オレにいいオンナ紹介してください。飲んでっから万年ギリギリライフのオレに。ついでにEとHにも紹介してやってください、手頃なのを。

≪万事休すか?≫

-ところで、翌朝7時45分出勤のオレが、当日01時42分に池袋北口で、激しい雨に降られながら、仕事の支度を持参していない時点で、その意味するところは、二度目の仕事飛ばしである。

-だから、一時間くらいは雨中を呆然と彷徨っていた。3時くらい、現金をほとんど持っていない状況で、スマホpayで食事を取る。

-そしたら急激に眠くなってきたので、北口駅前の濡れないところで、座って仮眠を取ることにした。

≪女の呼び声≫

-「ちょっと!どうしたの〜?大丈夫?」

-池袋北口の、おそらくATMコーナーかなにかの、下りたシャッターにもたれて眠っていたオレは、聞き慣れない女の声で起こされた。

-推定40歳くらいの小柄な女が、目の前にいた。

-「さっき他の男の人が、カバン狙っていたから…」

-たしかに、着ている白いシャツは血だらけだし、傷を負ったオレは、女の同情を誘ったろう。

-オレは丁重に礼を言い、西池公園方面に離脱した。

《午前4時12分》

-西池袋公園脇で、タバコを一服。公園の脇の道には、タクシーが客待ちの列を作っている。

-今からタクシーで川崎の自宅に帰り、支度して出れば、仕事を飛ばさずに済むかもしれない。オレは意を決して、タクシーにスマホpayが使えることを確認し、跳び乗った。

《午前5時30分》

-川崎の自宅着。とにかく疲れた。ちょっと休もうと…

《午前7時》

-慌てて起きる。ヤベー遅刻だ。またタクシーを呼ぶ。 

《午前7時50分》

-現場着。散々怒られるも、首の皮一枚。

《旅の終わり》

-こうして、何度目かの奇妙な旅が終わった。

《女帝への願い》

-女帝にお願いしたい。オレら軍団の遊び場を保障してくれ。他はどうでもいい。あと手頃なのを紹介よろしく!

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