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詩とおもう(ステイトメント)

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声明っぽいものを集めました。
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2019年9月の記事一覧

質疑(2019.9.28)

世界中で一番 悲しくて不幸なのはわたしだと これ以上ない確信を持って ガラス質に晴れ渡った空を見上げては 涙をのみ込む その無自覚な責任の所在について おまえに問う 浚っても浚っても 噴き出る泥水が愛なのだと いつ誰に刷り込まれたのか せめて味わわないように鼻をつまんで 息をのみ込む その救いがたい平和について おまえに問う おまえのその名に 爪で傷をつけて 離れて石を投げて 地に伏したおまえを 蹴りあげては叩きつける その脆弱な暴力の効果について おまえに問う

だから神などいないと言っただろう?(2019.9.19)

だから神などいないと言っただろう? 東アフリカ インド洋沖の小さな島 褐色の彼女は言った 英語はオーマイゴッドって言うけど わたしの神? 誰が神の姿を見たの? 黄色いわたしは頷きかけた だのに彼女は 続けてこうも言ったのだ 神を見たのはモハメッドだけ モハメッドだけが 神の言葉を聞いたの 誰も見ていない神を モハメッドは見たということ それを疑わないこと だから神などいないと言っただろう? 東アジア 太平洋の隅の列島 逆巻き押し寄せる津波を背に ゆっくりとした足取りで

不在(2019.9.14)

波は寄せては返し うねりは高く低く どこまでも落ちると見せかけて ふわりと浮き上がる 苦しい思いも流れ続ける涙も いつか終わる日が来る 簡単に忘れることはない 忘れなくてもいい 傷を刻みながら、血を流しながら それでも笑える日はある 泣きたい気持ちで、でも泣けなくて 泣く代わりに笑うこともある あなたが知るはずだった この世界のあらゆるものごとを あなたがいるはずだった という思いを抱いたまま わたしたちはやり過ごしていく わたしたちが生きている間中 あなたの不在は全てについ