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詩とおもう(ステイトメント)

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声明っぽいものを集めました。
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2019年2月の記事一覧

曙光(2019.2.21)

あれは 光だ と 目が言う 光あれ と 肌が言う こぼれている 熱いに違いない と 舌が言う 震えている 冷たいのだろう と 耳が言う 光と引き換えに 夜を差し出した 立ったまま眠る馬の足元に その手は握られている 光る石だ と 指は言った

石に(2019.1.27)

大きな石を切り出して 高く積み上げるのは 古代からのならい するものとさせるもの いただくものとささげるもの それは人のならい 足の裏で星を探す つみかさねつみあげる 眠りの中で風を読む くずれてはきざみこむ 石が朽ちるとき 星が消えるとき 崩れるな人よ 目を開き刻み込め

いき(2019.2.26)

いつから こんなにも深く ため息をつくほどに 呼吸を忘れていた 何を吸って 何を吐くのか からだに任せきり ため息のときだけ 肩を揺らす 吸おう わたしの意思で 肺が凍える冬を 吐こう わたしの底から 肺を焼く熱を やがて 春の嵐となる やがて 秋の野分となる いきこききゅうきといき すべて風となる

歴史(2018.9.18)

明日死んでもいいと思っていた 今は 死なないように生きることに必死 一月二日に生まれて 誕生日はお正月 日本全国おめでとう だけど どんな日も 誰かの誕生日で命日でって 何のコピーだ 本当に わたしが生まれた日は 排卵日か受精日か 知らないが こと個々に至る それを歴史と呼んだらいい

覚悟(2019.2.27)

過去は愛おしい 逃げ出したい なまなましさや 鋭く切り立ち 血の滲む過去ですら 時とともに 馴染んで 温もって ぼんやりと丸くなる 何度でも 再生を繰り返し 擦れて 捩れて 不確かに伸び縮む いつまでも 醒めない赤い血が 苛まれていることに 気づかせぬように おのれを温め続け 過去は 恋しい人肌となる その慕わしさは いつしか ためらいをも 偽りの過去とする 逃れられないなら 血に塗れながら 孵らぬと知りながら 未来を覚悟する

スカートをはこう・はきたかった人へ(2018.7.8)

今までは 理由が無ければはけなかった 文化祭の出し物 宴会の余興 もはや理由はどうでもいい 今日からスカートをはこう ひらひらふわふわ 付かず離れず 布一枚 軽さは弱さではない でも弱くたっていい 颯爽とじゃなくて全然いい 好きなようにザクザク歩こう 軍服よりも大股で歩ける いっそ軍服をスカートに 屈強な男たちが 爆風にめくれ上がるスカートの裾を押さえて 戦にならない いかんなく発揮されるスカートの心許なさ ははは スカートをはいて ただ言えること スカートは最高