【税務】税務調査の法的位置付け

 管轄する税務署の職員又は国税局の職員が、納税者に対して税務調査をすることがあります。

 すでに提出済みの所得税とか法人税とか相続税とかの申告書に誤りがないかどうかを調べるためです。

 この法的位置づけですが、まず一つに行政指導として行う場合があります。

 行政指導というのはあくまでも処分をするわけではなくやんわりとこうしてもらえないかと伝えるものです。

 これに対しては仮に求められたことを拒否しても、何らの不利益も課されません(行政手続法32条2項)。

 行政指導自体は不利益処分ではないからです。

 にもかかわらず、不利益があるかのような言動があれば、それは行政手続法に違反しますので、指摘すべきところです。

 行政手続においても、刑事手続と同様に適正手続の考えが当てはまりうることは憲法31条の要請でもあります。

 税理士にはこうした適正手続が課税庁によってなされているのか否か監視する役割が求められています。もちろん弁護士にもです。

 税務調査の法的位置づけでもう一つありうるのが質問検査権の行使としてです(国税通則法74条の2以下)。 

 この場合、納税義務者及び税務代理人に対する調査の事前通知(国税通則法74条の9第1項)が必要です。

 この通知はなされているのでしょうか?

 通知がある場合、これには調査の対象となる期間、帳簿書類その他の物件を明記することになっています。

 きちんと明記されていますか?

 質問検査権の行使の場合、拒否した場合に質問検査権行使拒否罪(同法128条2号)になることがあります。ただ、これはこうした不利益があることを事前に伝えて、答えるのかどうか検討させて、それでも明確に拒否する場合になりうる犯罪ですので、軽々に課されるものではありません。

 ましてや、行政指導なのか質問検査権行使なのかをはっきりさせないで、質問検査権行使拒否罪(128条2号)にしたりすることはできませんので、これははっきりさせてもらうべきです。

 税務調査の最大の問題点と言われているのが、このような質問検査権の行使なのか行政指導なのかを明らかにしないまま、調査を行おうとしていることです。
 
 この点が曖昧なまま、不利益があるかのような言動をしてきたときは根拠規定を明らかにするように求めて、行政手続における適正手続が履践されるべく監視して、行きすぎた権限の行使を抑制するようにすることが税理士、弁護士には求められています。

 税理士試験には憲法や行政法の科目がないので、こうした憲法、行政法の根拠から具体的な法律である国税通則法等を読むことができない税理士の先生、事務所の職員さんもいるかもしれません。

 課税庁等の公権力の行使には根拠が必要だという点、これだけはきっちりと押さえておくと良いと思います。これは税理士も納税者も同じです。

 今回はここまでとします。読んでいただきありがとうございました。

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