冬の握手
秋さびてこんな夜思い出すひとは星の器と飛び降りしひと
清らかな部屋がここにはないですが異国の人のひと日の祈り
タクシーも夜を走らず水を煽り水吐く男の髪の光ゆ
握りしめしこぶしを前に背の低い灰色の男わたしの父親
夕べ梳く髪の重たさ紀伊よりのやや長き地震に揺らされていつ
(地震=ない)
身に憶えなき青き火を入れられて光れる肩で息づきており
真暗の海が柩のなかに来るわたしのなかにいたくゆっくり
地震怖いなあ、怖かったなあと思い、まわりの人に怖かったと言って、やっていたことに戻ることが、地震が起こったときの自分のなかの儀式みたいになっている。転入生と握手をしたという。異国の人、清らかな部屋でお祈りをするのだけれど、ここには清らかな部屋がない。
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