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このパワーはどこまで続く?!そう感じた展覧会

ウィーンに行った際、Ai Weiweiの展覧会が開催されていたので、行ってきました。

随分前の話ですが、この展覧会について書かせてください!
彼の作品を見ると、いつも勇気が出てくるからです。

私の勝手な勘違いで、彼はパフォーマンスやビデオ作品からキャリアを始めたのだと思っていました。
私の中では、これが初期の代表作だと思っていたからです。

『Dropping a Han Dynasty Urn』 1995年の作品。
後漢時代、2000年以上も前の価値ある壺を落とす様子を撮った3枚の写真です。
伝統的なものを壊さないと新しいものが生まれない、というメッセージにも捉えられます。

その隣にあるのが、唐時代の壺にコカコーラのロゴ、『コカ・コーラの壺』

アメリカでも日本でも「体に悪い」というイメージがあってあまり売れないコカ・コーラが中国では馬鹿売れしている現状に対しての皮肉的なメッセージなのでは、と言われています。

考えてみれば80年代からアーティスト活動をしているので、そんなわけないですよね。
デュシャンのようなレディーメイドから出発していたようです。
1981年から1993年までニューヨークに住んでいたようなので納得です。

デュシャンのポートレートを模して作った作品がありました。1985年の作品。

その名も『Hanging Man』。
ハンガーで作って、そのまんまやん!って感じです。
が、この作品、考えてみたらすごいメッセージがこもっています。

こちらもデュシャンの自転車の車輪を真似しているとも言えますが、彼は中国人。
80年代、自転車は中国を象徴するものでした。
今では近代化が進んでそんなイメージは払拭されてしまいましたが、彼は中国の象徴とも言える自転車をつないで輪にしています。

彼が世界的に有名になったのは、北京オリンピックのメイン会場、通称“鳥の巣”の芸術顧問として携わったことが大きいのかもしれません。
彼は中国政府に気に入られ、そのまま中国政府とベッタリになるのかと思いきや、本当はスイス人建築家ユニットヘルツォーク&ド・ムーロンから芸術顧問の依頼を受けたのであって、最終的にはオリンピック開催について反対する姿勢を取ったのです。

それが中国政府から目をつけられるきっかけになったのですが、さらに2008年に起きた中国四川省での地震の全容を中国政府が隠蔽していることに対し、彼はブログで実態調査を始めました。
その調査を行うために現地入りした際、警察に頭を打撲されました。その後ドイツで脳内出血とわかり手術を受けます。
世界中で、彼の安否が心配されました。

中国に帰国し、2011年4月には脱税容疑で監禁されてしまいます。
その際に2人の看守に24時間監視された様子を再現したジオラマ作品がこちら。

2013年にベニスビエンナーレで展示されたものですが、転んでもタダでは起きない感じが、私は好きです。

彼の父親は詩人でした。
1966年に起きた文化大革命で反体制派として非難され、彼自身も幼い頃、新疆ウイグル自治区の労働改造所で暮らしたと言います。

彼の原動力は、父親とこの時の体験なのかもしれません。

彼の作品は、中国政府に対してだけではありません。
伝統的な技術を使った作品も制作しているのですが、その一つの2017年の作品、『Porcelain Pillar with Refugee Motif』

戦争が難民を生み出しているということを、仄めかしているようです。

同じ年に世界各地23カ国で撮影し、難民の姿を映し出した『ヒューマンフロー』というドキュメンタリーを発表しました。

以前、ARTiT で発表されたインタビューで彼はこんなことを言っています。

「私はアーティストの作品は、社会に意義を与えるべきだと考えています。そうすれば、当然それらの意義は多くのアーティストに影響するのです。彼らはただ、絵を描いて、美術館に展示したいだけではなく、社会に影響を与えたいと思っているのです。」

美術手帖のインタビューでは、こんなことを言っています。

「人々がその瞬間起こった事柄にしか興味がなく、過去の問題を正視したり、歴史に直面することを嫌う傾向の現れだと思います。」

ベニスのサン・ジョルジョ・マッジョーレでも、彼の作品を見ることができました。

ムラノグラスで作られたシャンデリア。
メメント・モリ(死を忘ることなかれ)をモチーフにした圧巻の作品です。
「今を生きよ」と言われた気がして、勇気が出てきました。

彼の作品が世界中のどこかで展示され、その作品を見た私たちが、過去に起きたこと、そしてその時の社会状況と今の社会状況の変化を感じ、これから私たちはどう生きれば良いのか考えることができるきっかけを作ってくれているような気がします。

このパワーはどこまで続くのか?!今後の彼の作品が楽しみです。

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