ペットボトル薔薇 | 中国隔離day11


隔離生活では、食事は部屋の前のテーブルに置かれることになっていて、食事が届くとスタッフがドアをノックして知らせてくれる。

今日もいつも通り12:00頃にドアがノックされた。

しかし、私は英語の聞き取りを20問終わらせるまで絶対に昼食は取るまいと誓っていたので、「おお、この偽者の爆弾は本物に見えます。」「ボブ、それは本物の爆弾よ。」という日常のどこで使ったら良いか全くわからない上にボブに一刻も早く逃げろと言及したくなる英文を音読していた。

しばらくすると、再びドアがノックされた。

なんだ?と思い、ボブには申し訳ないが仕方なく英語を中断しドアを開けると、いつも通りの昼食に加え、綺麗にラッピングされた素敵な薔薇とホワイトチョコレートが置いてあるではないか。

これには私の中の女子の部分が「あら。」と乙女のような声をあげた。
なかなか粋なことをするじゃないか…

ふと今日が、母の日であることを思い出した。

母の日にはカーネーションというイメージだが、薔薇を送ることもあるらしい。
これがスタッフによる新手のナンパでない限り、ホテルからのささやかな母の日のプレゼントというわけだろう。

周りの部屋を見ると、薔薇とホワイトチョコレートが置かれているのは私の部屋だけだった。

私が女性というだけで母であるという可能性にかけたのだろうか。
(隔離ホテルに到着した時、私以外の宿泊者はほとんど男性だった。)

残念ながら既婚者でもない上に母でもないが、私は結構花が好きなので有り難く頂いた。

この薔薇も、まさか誰の母でもない上に隔離生活中のよくわからない女の元に受け渡されることになるとは思いもしなかっただろう。非常に気の毒である。もちろん花瓶なんてものはないので、空のペットボトルに生けられた姿はなおいっそう気の毒であった。

ホワイトチョコレートは信じられないほど甘く、奥歯が痛かった。

先日の日記で、QRコード決済ができず水が買えなかった話を書いたのだが、いよいよ我慢できなくなり、クレジットカードで支払えないかと打診してみたところ、すんなり買うことができた。

1日2本は無料でもらえるので、追加で10本ぐらいあれば大丈夫だろうと10本お願いしたのだが、何回も決算するのは面倒なので1ケース24本まとめて買うことをお勧めされてしまった。

このホテルでの隔離は残り5日ほどだったので、正直24本もいらない気がする。

しかし、「いや、10本で大丈夫です」と言ったのちに足りなくなって「やっぱりあと10本お願いします…」なんてことになったら「ほーら、だから言ったやろ?」と呆れられることを恐れ、言われた通り24本購入することにした。

その日の夜にはまだパックされたままの水のペットボトルがケースごと届いた。

いや〜やっぱ多いな…
24本買っても大した金額ではないのだが、たくさん余らせてしまうのはなんだか悔しいので、それから必要以上に水を飲む生活が始まった。
プロテインに、コーヒー、味噌汁やお茶漬けなど積極的に水分を摂取した結果、若干お腹を痛める結果になってしまった。

数日前は深刻な水不足に悩まされていたのに、今は水分の摂りすぎによる腹痛に悩まされているなんて、人間の悩みは尽きないものである。

まだ大量に残っている水たちは、現在はダンベルとしての新たな生を受け大いに活躍している。

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