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なんで曲を作って演奏してるんだろう?

アラカキヒロコです。
タイトルのようなことを、ときどき、なんとなく考えます。
今日は、タイトルの問いに対する一つの答えを以下に綴ります。
ちょっと違う視点から観るとぜんぜん別なふうにも書けちゃう話題ですが、
ひとまず。

現実逃避としての音楽

私はシンガーソングライターと名乗って曲を作りよくピアノを弾きながら歌ったりしていますが、いったいそれはいつ頃から始めたのか。
遡ればおそらく高校の時にモスバーガーのクリスマスソングのキャンペーンかなにかに応募したのが最初だと思います(落選しました)。
浪人生の時もなにか5曲ほど作ったように思います。

受験勉強が煮詰まると、いつもピアノを弾いていました。
不安に苛まれるほど、曲作りに集中しました。
これはいわゆる現実逃避です。

そう。きっかけは現実逃避だったと思います。
なぜ逃避したのか。
当時の私はこの世界で生きるのがとても辛かったからです。
ただ息をしているだけで傷ついていくような感覚で
まいにちヘトヘトに疲弊していました。
自分は本当は生まれるはずじゃなかったと、
欠陥品なのに生きててすみませんと、
最初から存在していなければよかったと、よく思いました。
そのうえ嫌われて消耗したり心に波風を立てたくなくて、
怯える必要もないものに怯えながら、よく笑っていました。
その結果明るい人だと思われていました。
実際はギャップで心の中はぐちゃぐちゃでした。

どうしてそうなったかは長くなるので割愛しますが、
とにかくそんな私は、音楽が大好きでした。

人の気持ちはどんどん移ろう。
日々相対する人々の心の中はわからない。
人は信じられない。
いつ裏切るか、気持ちが離れるか、わからない。
自分の内面を説明する術も、まともに共有できる人もなく、
孤独感と疎外感を御し切れないなかでも
音楽だけは私を裏切ることなく、いつもそっとそばに
片時も離れず寄り添ってくれているように感じました。
まあ幻想なのですが。
私がそう信じる選択をしているだけです。
でも、だから、音楽には昔も今も恩義を感じています。

音楽なら、優しく許してくれるかもしれない。
否、許す、許さない、すら考えなくてもよい、
本来の健やかな景色を見せてくれるかもしれない。
そんな期待がどこかにあったから
音楽に執着し続けたのだと思います。

作曲し人前で演奏する転機

大学に入って、たまたま勧誘され入った
オリジナル中心のバンドサークルでバンドを始め、
曲を作り、人前で演奏するようになりました。
それまで、
見た目も良くなく技術もろくになく自信もない自分のような人間が、
自分の表現物を、一段高いところから、
人様の時間をとって聴いてもらうなどあり得ない、
自分が人前に立って正面切って歌うことなど許されない
(ステージでバンドで歌う経験は高校生の時一度ありはしたものの)
と思っていた自分がすんなりとバンドを始めたのは、
まわりの皆が気負わず当たり前のように作曲し演奏していたからです。
「あ、別にやっていいのか」と思いました。
その意味では、サークルに入ったのは大きな転機だったと思います。

私は、人に聴かせることを意識しているフリをしつつも、
本質的には自分のために曲を書き始めました。
自分が見たい景色をつめこんだ曲。
自分の感情を昇華させるための曲。

曲を作って演奏すると、狭い範囲ではあるものの
周りが評価してくれるようになりました。
しばしば、感動して涙を流す人も出始めました。
何をしている時よりも、音楽を通して人とコミュニケーションを
とっている時に自分が肯定されているような気がしました。
自分が見たい景色や言葉でできた曲を自分で表現し、
その間は人が受け止めてくれて、ときにはフィードバックをくれる。
当時まだ悪い方向に自意識過剰でナイーヴで不安定だった私でも、
「少なくとも、取るに足る人間として、歌に耳を傾けてもらえるんだ」
と感じました。
これも幻想なのですが。
私がそう感じる選択をしているだけです。
まあ、この自分の選択をうまく御し切れるなら世話ないよって話ですが。

私はステージに立って何年も、すさまじく緊張しいでした。
時には、手が震えたり、視界が狭くなったりしていました。
ガチガチに緊張し神経を摩耗させながら自分の曲を人に聴かせるなんて、
これ以上恥ずかしいことないんじゃないか、
なんでこんなマゾヒスティックなことやってるんだろう、
と涙目になりながらも、
ほかに自分を肯定できるものが少ないので思わずすがってしまう、
という情けない理由で続けてきた面も当初は大きかったわけですが、
それでも10年、15年も続ければ関わる人が増えてきます。
そうして責任や約束や経験が積み重なると、
ステージ上である種の矜持が生まれてくる部分もあるかと思います。

自分のための音楽

ここまで読んでいただけたらおわかりのように、
私の曲は人様に聴かせるためではなく
自分のために書き始めたところからスタートしています。
その後はどうあれ、出自としては「自分のための音楽」なわけです。
なんで曲を作って演奏してるんだろう?
とどのつまりは自分のため。

学生時代、バンド仲間とか、お客さんのアンケートなどで
「独りよがりな音楽をやるな」「自己満足な音楽をやるな」
「客をおいてけぼりにするな」というようなアドバイスを
しばしば耳にしました。
あと、これも。「売れる気があるのか?」

むしろ個人的には
「もっと突き抜けて未知なレベルでお客さんを置いてけぼりにしろ」とか
「自己満足をやるならもっと徹底的にやれ」のほうが
アドバイスとして納得できるかもと今となっては思うわけですが。

「売れる気があるのか?」という問いには口ごもった自分がいました。
「私にとって音楽は本質的に自分のためにあり、ビジネスは二の次です」
とはっきり言えるほど自分のことをわかるのは、
もっとだいぶあとになってからです。
「ありますが・・・」とか答えてしまう前に
自分の音楽についての気持ちを正面から見つめる必要があったよな、
と思います。

とりあえず長くなったのでこのへんで。
続く(かもしれない)。

ありがとうございます!糧にさせていただきます。