#34,#35,#36 家族関係リテラシー「家族関係リテラシーとは何か?」

1.なぜ家族関係リテラシーが大切なのか

家族はあって当たり前のものではない。
生き物であり、水と栄養が必要という大前提
家族を育てていくことは、人生の価値あるチャレンンジ

2.家族関係リテラシーの定義

1)リテラシーとは

情報リテラシー、ITリテラシー、メディアリテラシー、金融リテラシー
もともと「リテラシー」は、「識字能力」を指した言葉
現在では広く「適切に理解・解釈・分析する能力」として使われている。

2)家族関係リテラシーとは

「家族関係リテラシー」とは、家族関係において、起こっている現象を適切に理解し、自分も相手も尊重する関係性を実現する能力

3)家族関係リテラシーの構造

①根底にあるのが人権への理解と確信。
②アセスメント力
②−1悩んでいる自分自身を見つめる(自己認識)、
②−2相手の気持ちや考えを推察する(他者認識)、
③−3今、自分と相手との関係がどのようになっているのかを考える(関係性認識)

人間関係リテラシーの構造

3.人権への理解と確信

1)なぜ基本的人権の理解と確信なのか

①家族という親密な関係性のなかでの落とし穴
甘えのねじれ:主張しなくてもわかっているはずだ
コントロール欲求:「よかれ」というコントロール
被害感情の発生源:自己決定自己責任の原則
暴力に無自覚:モラハラ、ネグレクト、経済的支配、しつけと称した暴力

②家族のなかの人権意識が子どもの一生の財産になる

2)アサーション権とは

アサーション権とは、自分の意思や要求を表明する権利
基本的人権のひとつであり、誰にも生まれながらにして(自分にも相手にも)平等に与えられている権利
アサーション権の意味は、「表明してもよい」ということであり、「表明しなさい」と他者から強要されたり、「表明しなければならない」と義務づけられるようなものではない
権利ではあっても、必ずしも保証されているわけではなく、お互いの、自他の権利を守ろうとする努力によって実現されるものです。

3)代表的なアサーション権

①私たちは、誰からも尊重され、大切にしてもらう権利がある
②私たちは誰もが他人の期待に応えるかどうかなど、自分の行動を決め、それを表現しその結果について責任をもつ権利がある
③私たちは誰でも過ちをし、それに責任をもつ権利がある
④私たちには、自己主張しない権利もある
「支払いに見合ったものを受け取る権利」
「罪悪感や利己的な感じをもたずに依頼を断る権利」
「聴いてもらいたいとき、まじめに受け取ってもらいたいとき、それを求める権利」
「1人になりたいとき、一人になる権利」
「他人と違う権利」

4)アサーション権について留意すべきこと

①自分にもあると同時に他者にもあるという理解
②役割に付随した権利と混同しない

4.アセスメント家族関係の理解

1)人はストーリーを生きる存在であるという理解

どこまで相手のことを知っていますか?
認知のゆがみが起こりがちなのも家族
パートナーに対する愛情地図 知的感情
・人生の夢は何?/・人生における信条はなに?/・どんなストレスを抱えてる?/・これまでに経験した特別な出来事は?/子ども時代に経験した最もつらかった出来事は?/それにどうやって対処してきた?

2)家族関係の悩みは互いの物語の不協和音

双方に真っ当な言い分。正しい、間違っているをジャッジするのは不毛
意見の対立が起こると、そこに感情が介在して、ガタガタ、ギシギシと不協和音

3)アセスメントに必要となる思考

①メタ認知
自分自身や他者の認知について考えたり理解すること、認知をもう一段上から捉えることがメタ認知。
②俯瞰
自分の立場を離れ、一段高い位置から関係を見てみる 悪循環 バウンダリー
心理的距離(近すぎる 遠い) 世代間連鎖 三角形

4)特に注意したい関係性の歪み

① 過干渉・支配・コントロール
バウンダリーの侵害
②巻き込まれ・依存
自分のバウンダリーを適切に機能させることができない
相手の侵入を許してしまい相手に巻き込まれ、次第に相手に依存する

5.コミュニケーション

コミュニケーションを考える前提
私たちは自分自身の認識というフィルターを通して現実世界を知覚し、それを言葉やしぐさに変え、(記号化)音声やしぐさなどを通して相手に信号を送る
受信者は、送信者から送られてきた信号を受信し、受信した情報を価値観等のフィルターを通して解釈
解釈した内容を記号化し、送信するという繰り返しがコミュニケーションのプロセスです。
全く同じ価値観、人生観の人はいないので、コミュニケーションには必ずズレが生じる。
このコミュニケーションのズレを最小にし、自分も相手も尊重するアサーティブな関係性をどう築きあげていくか。

1)自分自身を知る、気づく

自己表現のスタイルに気づく
①攻撃的な自己表現
攻撃的な自己表現とは、「相手を抑えて自分の言いたいことを通す自己表現」1)です。
コントロールし、ねじ伏せようとする。
威圧的、感情的な態度で、言いたいことを押し付ける。
正論で相手を追い詰める。声を荒げる。八つ当たりをする。書類を叩きつける、舌打ちをする。わざと大きなため息をつく。相手をネガティブな感情にさせる

②非主張的な自己表現
非主張的な自己表現とは、「自分を抑えて相手を立てる自己表現」
遠まわしに言う、言いにくいことは語尾をぼかす。過度にへりくだり、言い訳をするなどがこれに当たります。
「何がいいたいのかわからずにイライラする、戸惑う」という印象を与える

③アサーティブな自己表現
お互いの主張や立場を大切にした自己表現をすること
自分が感じたことや思ってることを率直に自分を責めることなく伝える表現です。そして、相手が同じように表現することを歓迎します。
 その結果、意見が異なり、そこに葛藤が生じることも
アサーティブな自己表現のゴールは、その場をうまく収めることや、何とか同意を取り付けることにあるのではなく、「自分が言いたいことをアサーティブに伝える」というそのこと自体にある。

2)自己表現に影響を及ぼす認知的要因に気づく

自分自身の認知のフィルターに気づく

(1)自己概念
自己概念とは、自分自身をどのようにとらえているのかという自己像を指します。

ア.自己信頼
 自己信頼とは、自分を拠り所にできる、自分自身を頼ることができる、自分をあてにできるという意味。
自己信頼ができていると、不安や緊張感に押しつぶされず、アサーティブに
不十分だと、ささいなことで自信が揺らぎ、被害的な受けとめから攻撃的になったり、非主張的な自己表現に傾く。

イ.自己理解
自分の肯定的側面と否定的側面の両者をバランスよく理解できているか
自分の否定的側面ばかりに目が奪われ、肯定的側面をみようとしないと、自己表現は非主張的
肯定的側面ばかりに目を向けていて、否定的側面を覆い隠そうとしていると、他者からの耳の痛い意見に攻撃的に対応

ウ.自己受容
自己受容とは、「こんな自分はダメだ」と否定するのではなく、「今の自分はこうなん
だ」とありのままを受け入れること
今の自分をありのままに受け容れることができれば、他者をありのままに受け容れることにもつながる

エ.自尊心
自尊心とは、「プライド」という意味合いではなく、ここでは自分自身を大切に思う気持ち。世界に唯一無二の存在である自分を大切に思うから自分の気持ちをわかってもらおう、伝えようというという気持ちになる
自尊心が十分に育っていないと、「私が考えることなんて大したことじゃない」
非主張的な自己表現になってしまうでしょう。

(2)人間関係に関する信念
ア.人の心を傷つけてはいけない
人の心を傷つけてはならないという強い信念があると、慎重で控えめな自己表現
「なぜ傷つけるんだ!」と批判的になり、攻撃的になる可能性もあります。

イ.誰からも好かれなければならない
「誰からも好かれなければならない」という考え方が強いと、八方美人的な言動が強くなり、相手の顔色を伺い自分の意見を主張することをためらう
人との対立や葛藤を回避
他者に対して一転して攻撃的になる可能性があります。自分が誰からも好かれるように努力をしているのに、そのようなことは意に介さずマイペースを貫く人をみると、怒りがこみ上げる。

ウ.人に助けを求めるのは恥ずかしいことだ
 「人に助けを求める恥ずかしいことだ」という考え方が強いと、困っていても「助けて欲しい」と言えず、曖昧で遠まわしな表現となり、非主張的になりがち
助けを求める人に対して、批判的な気持ちが沸き上がり、攻撃的になる可能性

(3)無意識の思い込み(アンコンシャスバイアス)
家族はアンコンシャスバイアスの巣窟 

3)コミュニケーションスキル

(1)聴く
①相手の「話すこと」を励ます
・相手に身体を向ける
・必要なところでアイコンタクトをとる
・相手の話を途中で遮らない
・適度な相槌をうつ
・「そうか」「なるほど」など、承認の合いの手を入れる
などがポイントとなります。

②コミュニケーションのズレを最小にする聴き方
相手のストーリー全体に注目する
受け取ったメッセージを復唱する 確かめる

(2)話すこと
①何を伝えるかを明確に
・ニーズ:ニーズリテラシー
・具体的な提案
②どう伝えるか
・事実と解釈を分ける
・「私」を主語にする 「あなたメッセージ」は批判、非難につながりやすい
・思考や感情を書き出して、セリフを考える



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