#51,#52,#53 家族の発達段階「教育期後期」

改めて、今の日本の子育て事情
 子育て肯定感が減り「子育て否定観」が急増
 
ベネッセ教育総合研究所 1995年から首都圏の数千人規模の調査を5年後ごとに実施
家庭内のケアは一体だれが担うのか? 根本的な問題を考えていく必要がある

本日のテーマ:教育期後期(10代の子供をもつ時期)
①子どもと親との間にゆるやかな絆を形成する
②子どもからの拒絶を受け入れることを学ぶ
③次第に視点を子どもから配偶者に移し、夫婦を基盤にした家族の基礎を築き始める
④生活習慣病の予防に努める

1.思春期の子供(13歳~18歳)

①脳が完成していない:おとなのようでも脳は未熟
 行動の計画や決定、判断、衝動をコントロールする「前頭葉」が未発達
 偏桃体が過剰に活発

②行動としては
キレやすい。すぐに怒って自分の部屋にひきこもる
衝動的で集中力や根気にかけ、誘惑に弱い(アルコール、ドラッグ、デジタル、セックス)
親を動揺させる才能を如何なく発揮させる

2.親の体験

①親としての傷つき
⇒あいまいな喪失
「あのかわいかった子はどこへ行ったの?」

②過去の古傷が痛み出す
子ども時代に親から拒否された思い出がよみがえる
思春期の子育ては、人生を問い直す出来事

③夫婦関係への波及
夫婦関係が悪化(無責任だと弾劾、互いに責任を擦り付け合う)
思春期の子育ては、夫婦が一枚岩であることが望ましい(たとえ仲が悪くても)

3.親としての基本姿勢

①航空母艦
居続けること。うるさく制御しようとしない、まして追いかけない

②思春期のこども信じるということ
親の期待に沿って振舞うよう信頼するのではなく、道に迷い、失敗し、いろいろな問題にぶつかりつつも人生を生き抜いていく力を養っていくことを信じる

③親子の距離感(の難しさ)
・不安、心配で近づく親、離れるこどもの悪循環
一人の独立した人間として、子どものバウンダリーを護る
寄り添おうとし過ぎる親

4.親に必要なこと

①自分自身の「よい状態」を維持すること

②必要以上に「よい親」になろうとしないこと
子どもはもはやコントロールできない存在であることを認めること
<不安や心配がこみ上げてきて辛くなった時の対処方法をもっておくこと>

③親の無力を理解し、子どもの自由を尊重しつつ気がかりを伝える

④夫婦の出会い直しの機会とすること
困惑体験をシェアし合う/情緒的に支え合う/役割分担や作戦を話し合う
安心して喧嘩をし、仲直りを繰り返すこと

⑤親のサポートネットワークを豊かにすること(応援団を豊かにすること)
先輩の親/叔父・叔母/友人/同僚

⑥視野を拡げ学ぶこと
「〇〇すべき」「〇〇でなければならない」を疑ってみる 価値観の転換
不登校の子供の進路や居場所、相談先についての情報収集

5.子どもとの接し方

①過剰に反応しない
・子供のテストや部活の結果に関して、過剰な反応や否定をしない
・子供からの攻撃的な言動をうまく受け流す
 
いつも親のポジションでいること
暴力⇒暴力を受けてはいけない 鉄則

②話を聞くこと
・解決するのは子ども自身なので、評価はアドバイスをせずにただ話を聞く。「話してくれてありがとう」とだえ伝える
(親に話しを聞いてもらっているとき、子どもの脳にはオキシトシンが合成される)
・アドバイスはしてもいいかを聞いてから
・しかし、子ども自身で対処しきれない場合には、調整に乗り出す覚悟があることは伝える
(あなたを守るよ)

③ルールを決める
禁止や制限は無益なだけではなく、危険を招く。
自分を護るにはどうしたらいいのか、よく考えさせること、グループで考えさせることははるかに効果がある
自分で、自分たちでルールを決める
親子間のルールは、そのルールが実行可能か、感情面や友人との関係においても守ることが可能かを確認しながら親子で一緒に決める

④結果ではなく、努力を誉める(愛情のタンクを満たす)
子どもと体験を共にする
褒めるよりも感謝を言葉にする
〇〇して偉いね。
●●してくれて助かった。ありがとう 感謝してるよ。

⑤社会との窓を開く
・子供に自分の夢や生きがいなどを話す
・自分の仕事の内容ややりがい、苦労を話す
・政治、経済、社会などについて子どもと話す
・ニュースやドキュメンタリーを子どもと一緒に見て語り合う
・日本の将来について話す

参考文献

幼児の親子の変化を捉える調査「第6回幼児の生活アンケート」 「子どものためにがまん」から「自分の生き方も重視」へ ~育児負担感や不安感が増加、社会全体で子育てを支援する「チーム育児」を~

・上野千鶴子:最後の講義完全版 上野千鶴子 これからの時代を生きるあなたへ 安心して弱者になれる社会を作りたい、主婦の友社、2022

・イザベル・フィリオザ、土居佳代子訳:子どもの気持ちがわかる本 12-17歳、かんき出版、2022

・イザベル・フィリオザ、土居佳代子訳:子どもの気持ちがわかる本 6-11歳、かんき出版、2022

・皆川邦直:精神科医の思春期子育て講義、岩崎学術出版社、2018


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