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映画「ラブレター」

岩井俊二監督の「ラブレター」という映画を思い出した。

あの映画の中で気になっていたことがある。男性の藤井樹が、崖から滑落して、もう戻って来れないとわかった時、彼は松田聖子の「青い珊瑚礁」を歌った。彼の友人が「あいつ、松田聖子なんて大嫌いだったのに、なんで最期にあの歌だったんやろな」と言うシーンもある。

なんで嫌いな歌手の歌を歌ったのか?

考えてみれば単純だった。彼は、松田聖子が好きだったのだ。

あの映画にはいろんな要素が入っている。
同じクラスに、同姓同名の男女。
文通という、顔の見えないやりとり。
そして、亡くなった人との会話。

そして今回、「顔が好き」というポイントに気づいた時、あの映画の意味がまた少し見えてきたように思う。

男性の藤井樹は、松田聖子が好きだった。でも、その思いを隠し、大嫌いと言っていた。そして、死ぬとわかった時に、好きな松田聖子の好きな歌を歌った。

中学生のとき、女性の藤井樹が好きだった。でも、その想いは伝えなかった。その後、顔が似ている女性に会った時、彼女と結婚しようと考えた。

この映画で、もう一つ気になったことがある。彼は、女性の藤井樹と婚約者、どちらが好きだったのか。女性の藤井樹だろう。

顔が好きということは、その相手を理解していなくても、何か惹かれるところがあるということだ。顔が好きと言うと、表面的に聞こえるかもしれないけれど、自分が本当に掴みたいものへ繋がるための、大事な秘密の道なのかもしれない。