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『天と地の守り人 第三部』感想

『天と地の守り人 第三部』上橋菜穂子 偕成社 7/23読了

※以下の感想は、決定的なネタバレを含みます。

チャグムの道もバルサの道も、どちらも辛くて険しい道だったけれど、落ち着いてよかった。
大団円でよかった、ではない。落ち着いて、よかった。
でもおとぎ話ではないんだから、悪者が成敗され主人公の側が完璧な勝利をとげる、なんてことはないわけで、どちらにもそれなりの傷みと、それなりに得るものがあっての結末。タルシュも、他の国も。
サンガルは、おそらくは征服された他の国々と較べるとましなんだろう。たぶん、枝国と扱いは違う。おそらく一部はサンガル王国として復帰する。
新ヨゴ皇国、カンバル、ロタは兵は失ったけれど国はそのまま。
タルシュは最大時よりは領地は小さくなったけど、南の大国には変わりはなく、数年後、十数年後に国の基盤をしっかりさせたら、もう一度北の国に色気を出してくるかも。
という、ある意味、現実的な終わり方。

でもやっぱり、チャグムは哀しい。否応なく大人にならざるを得なかったチャグムは哀しい。
もっと子供のままでいられたはずなのに。もっと見識を広めて、平時の王になるべき経験を積んで、父王との確執があるから、それも平たんな道のりではなかっただろうけれど、それならば、民のためにと泣くことはおそらくなかっただろうに。

でも、チャグムはきっといい王になるだろう。義妹や義弟にも慕われる王に、民に慕われる王になってほしい。そしてできればまたサンガルや他の国を訪れる話も見てみたいなぁと思う。

バルサとタンダは、ようやく。
お互いに大切なものをいろいろと失って、でもお互いは失わなかったんだなあと思うと感慨深いです。
この二人は物質的なものは最初から求めてはいなくて、ただ互いが大切なんだなということは端々からうかがえてたから、ようやくそれを自分自身にも許せるようになったということがとても嬉しい。
これからまた、二人と、トロガイ師と、ときどきはチキサとアスラたちとの優しい時間を過ごせるといい。

たぶん、バルサとチャグムが会うことはもうないんだろうな。もし会うとしたら、それはまた新ヨゴ皇国に何か危機が迫ったときじゃないかという気がするけれど、そんなことは来ないような気がする。
でも会わなくても、確かにバルサとチャグムはつながっているんだなと思います。

さて、残すは番外編ですね。そちらを読むのも楽しみです。

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