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『大名倒産 上・下』感想

『大名倒産 上・下』浅田次郎 文藝春秋社 5/27読了

越後の小藩・丹生山松平家を継いだばかりの小四郎は、ある日、藩が借金だらけで幕府への上納金さえろくにないということを知らされる。それも、幕府の重職からー。

浅田次郎さんの本は読んだことがなくて、でもななにーのインテリゴロウで稲垣吾郎ちゃんと対談しているのを見て面白そうだと読んでみることにしました。吾郎ちゃんと話している浅田さんが、なかなかに偏屈じいさんで、でもなんだか憎めないというか可愛いところもあって、そして自分の書いた本に自信があるところが気になって。
下手に謙遜することなく、自分の本のここが面白いと言えるのはすごいなぁと。

あらすじを読んでいた段階では、超高速参勤交代とかそういう系統なのかと思っていましたが、ちょっと違う。

まず敵は無茶振りをする御老中だとか、悪徳商人だとか、悪家老だとかそういうのではなく、実は家督を譲って隠居を決め込んだ先代藩主。つまり、主人公・小四郎の父。そして彼に忠実な家老を含めた家臣たち。

先代は借金で首が回らなくなった藩をなんとかすべく、計画倒産を狙っていたのです。
そこで白羽の矢が立ったのが、妾腹で本来であれば後継候補に名前が挙がることすらなかった四男の小四郎。当然、そういう教育を受けたこともなく、江戸城に上がる前に通り一遍の礼儀作法を叩き込まれたくらい。

先代は小四郎とはほとんど一緒に暮らしたこともなく、つまり取り立てて小四郎に対する情もない。小四郎は藩を継ぐ前には借金のことも知らされず、事が露見してからもどれくらい借金があるかもろくに知らされず、要は小四郎は詰め腹を切らせるテイのいい人身御供として選ばれたのです。

その小四郎は生真面目で、藩を継いだ際、近習として取り立てた幼馴染みの友人二人と共に、何とかこの苦難を乗り越えようと奔走します。
大丈夫かな、この人たち、と思ってしまうくらい頼りないスタートでしたが、小四郎の人柄や熱心さに絆され、次第に周囲の人たちも(神様も)小四郎に肩入れしー。

とにかく登場人物が多く、主人公は小四郎ですが、小四郎を中心とした群像劇の要素もあります。
小四郎の兄と兄嫁のエピソードは微笑ましいのですが、兄嫁の父が曲者…かと思いきや。
この兄嫁の父が好きでした。あのー、なんというか、まあいわゆる脳筋ですね。このタイプ好き。

あまりにも登場人物が多すぎ、話がいつの間にかかなり壮大に広がっていったので、続編が読んでみたいと思いました。群像劇のようだと言いつつも、最初から出ている小四郎の近習の幼馴染二人はあまりスポットが当たってない。
他にも、下巻になってから登場した越後の藩の人たちとか、そこから派生した船主や上方商人のことも気になるし、水売りの先の話も気になります。
小四郎がこれからどんなお殿様になっていくのかも、どんな奥方様が来るのかも。

続編、書いてくれないかなぁ。

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