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『ガニメデの優しい巨人』感想

『ガニメデの優しい巨人』J・P・ホーガン 創元SF文庫 5/30読了

『星を継ぐもの』の続編。
とはいえ、あまりにも久し振りに、十数年振りくらいに手に取った、ような気がする。なので、前作を思い出すのに相当時間がかかりました。

月面で発見された真紅の宇宙服を着た遺骸は、年代測定によると死後5万年を経過していた。
チャーリーと名付けられたこの人物、そして彼が属していたはずの集団は、チャーリーが月で発見されたことからルナリアンと呼ばれるようになった。
ルナリアンの正体を探る調査に携わることとなったヴィクター・ハント、そしてクリスチャン・ダンチェッカーは、チャーリーが残したと思われる日記やチャーリーの携行食料らしきもの、その他様々なものを調べるが、なかなか謎は解明しない。
さらに木星の衛星ガニメデを訪れた調査隊が、宇宙船の残骸と、地球人、そしてルナリアンとは全く体格も何もかも違う遺骸を発見したことで、さらに謎は深まってしまうー。

ハントとダンチェッカーはその謎を解くことに成功しますが、その続編となる『ガニメデの優しい巨人』で、二人はガニメデで発見された遺骸と同種族のガニメアンと遭遇します。

ガニメアンの体格は地球人と較べるとかなり大きく、表題のガニメデの優しい巨人とは、すなわちガニメアンのこと。
そして、なぜ『優しい』かというと、ガニメアンは争いを好まないから。

好まない、というのはまだ控えめな言い方で、彼らには闘争本能そのものがないのではないかと思われます。地球人が人類同士争うことすら理解できない。そんなことをしたらお互い傷つけあってしまうかもしれない、殺してしまうかもしれないのに、どうしてそんなことをするのか理解できないのです。
闘争本能どころか、競争意識すら彼らの理解の外にある。

虚栄心もどうやらないみたいで、ガニメアンについての描写や、彼らが地球人を見て困惑しているところを見ると、たとえば嫌いな人が失敗するのを見て溜飲が下がるというような、自分の嫌な部分が浮かび上がってくる感じがしてとても居心地が悪く感じてしまいました。

とはいえ、それはこの作品自体の魅力を削ぐわけではありません。あくまで、読んでいる私自身がそういう嫌な部分を持っているということ。

ガニメアンはとても優しいし、どうしてそういう種族となったか、という考察も作中できちんとなされていて、このお話自体はとても面白かったです。
地球人とガニメアンの差や、ガニメアンの抱いた罪悪感や、おそらく地球人はそうは思わないんだろうな、と思ってしまうことも含めて、このお話はとても細かいところまできちんと考えられていて面白かった。

このお話は、さらに『巨人たちの星』に続いているので、そちらも読もうと思っています。今度こそ、話を忘れる前に読みたいな。

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