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映画『ばるぼら』感想

映画『ばるぼら』2020/11/21鑑賞

公開されてそれなりの時間も経っているのでがっつりネタバレしてます。


ストーリーについては、ここで私が書くよりも公式サイトなどで見てもらった方がいいと思うので、私はこの映画を観て思ったことをつらつらと書きたいと思います。
なのでストーリーの順番には関係なく、脈絡もない、そんな感想になるはず。

手塚治虫原作、息子の手塚真が手掛けた映画『ばるぼら』。原作は未読で、正直に言って、稲垣吾郎ちゃんが見たくて行きました。
事前情報としては、異常性欲に悩まされている小説家美倉(稲垣吾郎)が「ばるぼら」と名乗る美女(二階堂ふみ)と出会い、彼女に溺れていく……というくらい。あとはR15指定だということくらいしか知らなかったんですね。
いま改めてあらすじを見る限り、原作とは少し変えられているようですが、原作を読んでいた人たちは、この映画はどう思ったんだろうな。

それはさておき。

撮影がクリストファー・ドイルということもあり、映像は綺麗。
私は明度が低いだけでなく、彩度も低い映画って苦手なんですけど、ばるぼらは明度が低くてもくすんだ感じがなくて見やすかったです。
美倉とばるぼらが出会う地下鉄の駅の暗い映像も、陰影がくっきり出ていて好き。

R15というのはどんなものなのか、と見る前はドキドキでした。R15と言ってもエログロその他基準はいくつかあるだろうけれど、その基準がわかんないので。
やることやってるシーンが同行じゃなくて、もしかしてスプラッタぽくなるんじゃないかとドキドキ(というかびくびく)しながら見てました。そんなシーンはなかったですが。たぶんやることやってるシーンそのものよりも、獣姦とか屍姦とか首が飛んでる(ように見える)シーンとかでR15指定になったんじゃないかと思います。

吾郎ちゃんも二階堂ふみちゃんもすごいなぁと思ったけど、考えてみれば吾郎ちゃんの映画デビューは年上の女性との恋(とセックス)に溺れる少年だったような……。

さっきちらっと書きましたけど、この映画はもしかしなくても炎上しそうなネタがたくさん出てきてると思うんだけど、それをさらりと描写してました。
映し出されているのは人間の生々しい部分で、でも綺麗な映像で、現実味が薄いんですよね。そこに確かにいるのに、知っている場所なのに、こことはどこか違う世界。
ばるぼらの住む幻のような魔術のある世界も、美倉の住む現実のはずなのに地に足のついていない世界も、自分のいるところとは違っていて、まるで向こうとはガラスで隔てられているような不思議な感じでした。

この映画には、何度も見ないと気づかないような仕掛けがたくさんあったんじゃないかと思います。隠しているわけじゃない。ただ説明もされないから、何度か見ないとわからない。
監督自らが映画公開後にTwitterでラストシーンのネタばらししてたましたが、私はそこはまったく気づいていなかった。
言われてみればたしかにそれは映っていたのに、スクリーンに映し出されているばるぼらばかりに目が引き寄せられてたりして。
そんな一度では見通せないような仕掛けは、でもこれ見よがしではないんですよね。これ見よがしにたくさん並べられているから気づかないのではなく、何度も見ているうちに意味を持って浮き上がってくるような感じ。
私は前者のタイプも好きですが、この映画のように後者のタイプも好きです。この映画ではまんまと気づかなかったので悔しいけど。

そしてこの映画は出てくる役者さんがなかなか癖が強かった。渡辺えりさんはわかりやすく怪演でしたが、私が目が放せなかったのは渋川清彦さん演じる四谷。
渋川さんは同じく吾郎ちゃんの出ていた『半世界』にも出てらしたんですが、あちらとはまるで違う役柄で、ほんと役者さんってすごいな、と思いました。
調べてみたら渋川さんはモデルをしてらしたんですね。通りでスーツを着て立ってるだけなのになんというか雰囲気があって、目が惹きつけられました。

四谷は、はじめは美倉のよくあるライバル的な立ち位置の小説家というだけかと思ってましたが、だんだん存在感を増していき、驚いたのは、あの黒ミサのシーンにいたよね? 私の見間違いじゃなければ、あそこにいたと思うんだ。
何かに気づいたら式描写はあったけれど、あのときはなんの説明もなくそこにいて、その後も何の説明もなかったから余計に四谷が不気味というかなんというか。
もう気になって気になってしかたがなかったんですよね。
四谷の目から見たこのお話も見てみたいなぁと思いました。


そして物語の最後。
美倉とばるぼらが出会った地下鉄の駅の階段の下。再びばるぼらが座り込んでるシーンが映し出されましたが、美倉と出会ったときとはばるぼらの体勢が違うんですよね。
いろいろと含みを持たせた終わり方だなぁと思いましたが、公開後の監督のツイートで最後のシーンの写真があって、そこでフォーカスされていたのが、私がばるぼらばかりに目が行っていて気づいていなかった新聞。美倉の書いた『ばるぼら』という小説がベストセラーにという記事の載った新聞でした。
これはいわゆる夢オチなのか、それとも死んでしまったはずのばるぼらは実はどこかで生きていたのか、それとも生き返ったのか。

そんなふうにいろいろと考えてしまうお話でした。

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