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日記、のようなもの #123 ゆっくりと

今日のTwitterのトレンドにずいぶん長いことあったのが「倍速視聴」。
NHKのあさイチであったのかな。
最近はタイパという言葉も聞こえてきますが、なに言ってんだ?と古い世代の……哀しいことに古い世代と認めなければならないけれども、私は思う。

あらすじを知ることができればそれでいい、というふうに舵を切ってしまったのならば別にいいと思う。どういう話か、ということをそこそこ語れるだけでいいのなら。
でも倍速視聴ではわからないのは、その作品の空気感だとか、たとえば本で言えば行間を読む、という部分だったりとか、冗長な部分にこそ含まれているもの。
神は細部に宿ると言いますが、倍速視聴ではそういうところは読み取れないんだろうなと思う。

つまり、倍速視聴している人は一番美味しいところを自らのがしてるんじゃないかと思うんですよね。本当にもったいない。

とはいえ、私自身も若い頃は数をこなすのに倍速で見ていたことがあるので、絶対的にそれはやめた方がいいとも言い難い。
あの頃倍速視聴をしていたのは、主に期限ぎりぎりのDVD。
倍速視聴ではないけれど、とにかく爆速で本を読んでいたのも、期限ぎりぎりの図書館の本。

どちらもできるんだけど、やっぱり結局筋を追うだけになっちゃうんですよね。
倍速視聴の方はそれでもまだちゃんと言葉が聴き取れると思うんだけど、本を爆速で読むときには一度に二、三行視界に入れて読むので、本当に筋しかわからない。

最近は倍速視聴も爆速で本を読むこともしなくなりましたが、そうなるとつくづく、あのとき自分はもったいないことをしていたんだなと思います。

ただ、実際いま倍速視聴をしている人たちがそれを実感するのは、やっぱりずいぶん先になってからだと思う。
でも本当にもったいないから。いろんなものに広く浅く触れるのも大事だけど、数少なくとも狭く深く触れるということも大事だと思う。
「広く浅く」がどういうものかは「狭く深く」を体験しないと実感できないと思うんですよね。ですが、倍速視聴する理由がタイムパフォーマンスだけなら、倍速視聴はやめた方がいいと思う。

Twitterではいろんな方が、どうして倍速視聴はやめた方がいいのかは書いている。そしてそれはもっともだなと思う。
ただ、なぜ倍速視聴をするのか、という話で、倍速視聴をする人たちはタイパを求めているというような話ばかりがクローズアップされる気がするんですけど、それだけじゃないと思うんですよね。
言ってしまえば、コンテンツが多すぎることも大きな原因なんじゃないかと思うんですよ。
コンテンツが多すぎるので、別に倍速視聴をしていなくても、ワンクールにいくつかドラマを見ていたら忙しくてしょうがない。
そんなにたくさんコンテンツがある中で何度も見返したくなるような作品に出会えたとしても、そうこうしているうちにまた新たなクールが始まってしまう。
まして、いくつもドラマを見たい、映画を観たい、という人であれば、たくさんあるコンテンツの中から取捨選択するのも難しい。
結果的に倍速視聴しなければ、ついていけないんじゃないかなと思うんです。

本当にもったいないなぁ。
世の中には、無音の部分を楽しんだり、画面の中央ではなく端っこの方でこっそり繰り広げられているものを見つけ出したり、最後を見て伏線をもう一度見直したり、映画やドラマの見方はたくさんある。でも、それらは倍速視聴じゃ見逃してしまう。
本も同じ。あらすじを読んでわかった気になったとしても、作者によって文体は違うし、行間を読めというようなシーンもある。
本筋には関係のないところで、実はとても重要な物語が語られていたりもする。爆速で読んでいてはそう言ったものには気づけない。
何度も同じことを言うけれど、本当にもったいない。

だけどタイムパフォーマンス、なんて言葉が出てくるほど、倍速視聴なんて言葉ができるほど、時間がない人がいるのも確かなので、コンテンツを作る側も少し考えてほしいなあとは思ってる。
倍速視聴でも見てもらえるようにわかりやすく作る、という方向ではなく、コンテンツを減らしてひとつひとつの密度を上げるという方向性だってある。
私としては、むしろそっちに行ってほしいな。
今はとにかく、民放だけでもドラマの数が多すぎる。そのうえ、配信オンリーなんてものもあるんだもの。

取り留めのない話になっちゃったけど、つまり何が言いたいかと言えば。
倍速視聴をしている方へ。
倍速視聴は本当にもったいない。時間がないのはしかたがないけど、取捨選択して深く掘り下げて濃密に見るという見方もあるよということ。
コンテンツの作成側へ。
コンテンツの方も、いっそ数を減らしてひとつひとつを濃密にしてもいいんじゃないかな、ということ。

そんなことを今日はずっと考えていました。

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